ガブリエル・ジェズスは一夜にしてブラジルのヒーローになった【写真:舩木渉】
ブラジル代表のコパ・アメリカ2019(南米選手権)優勝に向けて、1人の選手の存在が大きな後押しとなるかもしれない。
現地2日に行われた準決勝で、ブラジル代表は2-0でアルゼンチン代表を破った。決勝進出の立役者となったのは1得点1アシストのFWガブリエル・ジェズスだった。
序盤の19分、中盤の競り合いでこぼれたボールを拾ったDFダニエウ・アウベスが中央を突破し、右サイドへ展開。外に開いていたFWロベルト・フィルミーノの折り返しに、右からゴール前に侵入していたG・ジェズスが合わせてブラジルに先制点をもたらした。
さらに71分、味方のクリアボールにいち早く反応し、ピッチ中央付近でボールを確保したG・ジェズスはそのままスピードに乗って一気に2人を置き去りに。ペナルティエリア内で鋭く切り返して3人目もかわし、フィルミーノにあとは決めるだけのラストパスを渡した。このアシストから2点目が生まれ、試合の大勢も決した。
試合後はG・ジェズスを絶賛する声が相次いでいる。ブラジル代表のチッチ監督は「ガブリエルは決して自分自身を諦めず、彼と働く全てのプロフェッショナルに感銘を与える。人々は彼に『君は痛みに耐えて走らなければならない』と言い、それは私が彼に要求したものでもある。自分はまだ改善しなければならない点もあるし、若いのだからさらに進化しなければならないが、私が『50本シュートを打て』と言えば、51本打つだろうね」と背番号9の献身的な姿勢と、大一番で残した結果に賛辞を送った。
地元紙『スーペル・エスポルチス』も、スポーツ面にG・ジェズスの写真を大きく配置し、「オーーーレ! 光を照らす、ジェズスが違いを生み出した」と見出しを打った。採点でもダニエウ・アウベスと並んでチーム内最高の「9」と評価された。
寸評では「迷いから覚めた。先制点を決め、2点目へのパスも出して輝いた」と、なかなか結果を残せなかった最近の不調を払拭したことにも触れられている。ロシアワールドカップでは期待されながら無得点2終わり、所属するマンチェスター・シティでもリーグ戦29試合出場7得点と不完全燃焼。今大会も全試合に出場しながらノーゴールが続いていたが、輝かしいパフォーマンスで周囲からの評価を覆した。
確かにアルゼンチン戦のG・ジェズスのプレーには気合いがみなぎり、これまでの試合とは明らかに質の違う動きを見せていた。
試合前日に「G・ジェズスが決めて勝つ」と予想していた地元ラジオ『スーペル・ノティシアFM』の美女レポーター、ロハナ・リマ氏も試合後に「ほら言ったでしょう。私の予想通り、G・ジェズスが決めて勝ったわよ」と得意げだった。
守りの安定感が抜群な一方で、攻撃に決め手を欠くことの多かったブラジルにとって、G・ジェズスの覚醒は朗報。コパ・アメリカ決勝に勝利し、南米最強の栄冠を勝ち取るために背番号9の頼もしい姿が戻ってきた。
(取材・文:舩木渉【ブラジル】)
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