「ヤナさん(柳沢敦)もお世話になりましたね」
── コンディションの維持の秘訣は?
「よく食べて、しっかり寝ること」
── 練習や試合後のケアは念入りなほうですか?
「ケアを怠ると、自分にはね返ってくるんでね。誰のためでもなく自分のためにやるもの。ただ、何か特別なことをやっているわけではないですよ」
── その背中を、いまの若い選手が見ています。梁選手が特に影響を受けた先輩はいましたか?
「あの人のやり方を真似しようといった取り組みをしたことはないですけど、興味を持ったときは自分なりに話を聞きにいっていました」
── 往年のミスターベガルタ、2010シーズンで現役を退いた千葉直樹さんとか。
「あと、ヤナさん(柳沢敦)もお世話になりましたね。自分がその年齢になったときに役立てばと。取り組み方はいろいろありますが、やはり重要なのはトレーニングじゃないですか。そこでやれるというのを感じなければ自信にならない。だからこそ、練習には集中して全力を傾ける。その場で自分のことを確認する意味もあるのかもしれません」
──動きや感覚など内なる声を聴く。
「そうですね」
「違うやり方で生き残る道を探せばいいやん」
── 一方で、ベガルタ仙台一筋にプレーし、よくここまで登ってきたなと手にした見晴らしを味わう感覚は?
「プロに入ったときは、漠然と30歳までやりたいなと考えてました。30を超えたら、35までピッチに立てたら最高やなと。そして35になったらなったらで、もう1年、もう1年と欲が出てくる。サッカーをやってて、楽しいというのが一番大きい」
── ボールを蹴る喜び、プレーする楽しさは、ずっと色褪せない?
「完璧を求めたいというか……。これだけ長いことサッカーをやっていても、簡単なインサイドキックをミスしたりするんです。思わぬパスミスをやってしまう。えっ、これをミスるんやという感覚。それが面白さにもつながっている」
── 選手によって個人差が出てくる身体の変化については?
「それ自体は自然なこと。これまでできていたプレーができなくなっても、違うやり方で生き残る道を探せばいいやんと思います。逆に、経験があるからこそできる読み、ポジショニングは絶対にある。そういうところでカバーし、勝負しないと。いつまでも大事に若い頃のイメージを抱えていても、自分が弱っていくだけです」
── 今季、ルヴァン杯でFC東京と対戦し、向こうには17歳の久保建英選手がいました。率直にどう感じましたか?
「あの若さでJ1でプレーし、結果も残している。やはり、そこはすごいですよ。特に点を取ってアシストもして、どんどん自信が確信に変わっている。迷いなくやっていることが、さらなる結果につながっている」
(取材・文:海江田哲朗)
▽梁勇基
1982年1月7日、大阪府生まれ。阪南大学から04年にベガルタ仙台に加入。3年目の06年から背番号10を背負い、ベガルタの不動のバンディエラとして君臨。今季で16年目を迎える。昨年Jリーグ通算500試合出場を達成。北朝鮮代表としては08年に初招集されるも10年南アフリカW杯のメンバーには落選。その後もAFCアジア杯などで代表を牽引する活躍を見せた。
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