ウルグアイの衝撃のスタッツ
はじめに紹介したいウルグアイの前半のスタッツがある。
そもそもだが、基本的にはどのチームも前半のサッカーにチームのスタイルが色濃く反映される。後半になると疲労によって志向するサッカーの実現が難しくなることが原因と考えられる。あるいは、急いで点をとりにいくために、ショートパス中心のチームがスタイルを曲げてロングボールを多く蹴ることもあるだろう。
さて、そんな「前半の」パス成功率が非常に低いのがウルグアイ代表だ。ここまでの前半のパス成功率ワースト3が全て、ウルグアイ代表が占めている。エクアドル戦の73.1%、日本戦の75%、そしてペルー戦の73.7%だ。
ワースト3全て占めていることもそうだが、南米の他のチームに比べて特別球際が強いわけでもない日本代表との試合でも、これだけ低いパス成功率になっている事実に、ウルグアイの特徴が現れている。彼らはまるでボールを保持するつもりがない。
もちろん2ボランチのフェデリコ・バルベルデとロドリゴ・ベンタンクールは非常に技術レベルの高いプレイヤーだ。彼らから決定的なスルーパスや、状況を打開するサイドチェンジが行われることもある。ただし彼ら以上に優先順位が高い選手たちが前線に2枚もいる。ルイス・スアレスとエディソン・カバーニだ。
2トップ依存のサッカーの限界
よくも悪くもなのだが、「前線の2枚になんとなくボールを預けると、状況を打開してくれる」。そんな信頼感が、ウルグアイ代表をロングボール中心のサッカーにさせた。また残念ながら現在のウルグアイのスカッドには、センターバック、ボランチ、ストライカーの中央に比べて、サイドアタッカーのクオリティは少し落ちる。
ボールを保持して相手を引き付け、サイドアタッカーが仕掛けられる状況を作るよりも、確立は低い状況でも前線二枚にボールを預けたほうが圧倒的に得点の匂いがする。もちろん押し込んだ状態ならサイドを人数かけて攻める場合もあるが、まず最初は2トップを見ることの優先順位が高い。そんな状況がウルグアイ代表の2トップに依存する直線的なサッカーに拍車をかけた。
スアレスとカバーニは本当に万能で偉大なプレイヤーたちだ。このシンプルなサッカーでも、ボールを収めチャンスを演出し、2度ゴールネットを揺らしている。結果的にギリギリのオフサイドで取り消されてしまったが。
ただ不運もあったとはいえこのサッカーが少し限界に近づいていたのも確かだった。というのも彼らは二人とももう32歳。ベテランがこの過密日程で常に頼られる状況というのはかなり辛い。全盛期の彼らと比べると、足が止まってしまっている場面も散見された。
特にスアレスに関しては、ゴールの近くでの存在感は相変わらず圧倒的だが、ドリブルで突破する瞬発力はさすがに落ちてきている。個による打開にも限界がある。両エースに依存するサッカーの終焉を象徴するかのように、PK戦では、あのゴールハンターのスアレスが止められてしまった。
ペルーも守備面で奮闘
また忘れてはならないのはペルーの守備が堅かったことだ。グループステージではブラジルを相手に5失点を喫したが、これはペルーの守備が緩かったというよりも、単純な個人のミスや試合展開が少し不利に働いたこと、そしてブラジルのプレーのクオリティが高すぎた印象だ。前半32分で3失点と立て続けにネットを揺らされ、集中力を切らしてしまった。
ただこんな例外を除けばペルーの守備は堅い。ミドルゾーンからサイドに追い込むプレスをかけて密集を作りボールを奪いきることができていた。
運にも恵まれて準決勝に進出することが決まったペルー代表が次に当たるのはチリ代表だ。ウルグアイ代表同様、ソリッドに戦うチームである。非常にハードな戦いになるだろう。衰えつつあるとはいえ、強烈な2トップを抑えることができたペルーなら十分チャンスはある。
(文:内藤秀明)
【了】