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「マンUは何度だって蘇る」。ポグバもルカクもデヘアも不要、世代交代こそが再建への道【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

アレックス・ファーガソン元監督の薫陶を受けたオレ・グンナー・スールシャールは、昨年12月にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任。就任直後こそチームはV字回復を見せたが、その後は失速。6位に終わり、チャンピオンズリーグ出場権を逃した。覇権奪還に向けてユナイテッドが辿る道とは?(文:粕谷秀樹)

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断 text by 粕谷秀樹 photo by Getty Images

マンU失速の原因は…

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昨年12月に就任したオレ・グンナー・スールシャール監督【写真:Getty Images】

 オレ・グンナー・スールシャール着任後、18節から10勝2分無敗。ところが30節から2勝2分5敗。アーセナルとマンチェスター・シティに敗れ、ウォルバーハンプトンとエヴァートン、さらに降格が決定していたカーディフにも屈した。とんだ醜態である。

 V字回復を見せていた当時、筆者は「3位も見えてきた」と情報番組などでコメントした。最終節まで無敗が続くとは思っていなかったものの、少なくとも五割はキープできるだろうと予測していたからだ。マンチェスター・ユナイテッドの2018/19シーズンは、不安と不満、怒りとともに幕を閉じた。

 失速の要因は、ひとえに強化の失敗だ。シティやリバプールに比べると強化部門のレベルが低く、カネばかり使って選手層は一向に充実しない。ポール・ポグバがやる気を見せ、アンデル・エレーラとネマニャ・マティッチの好調時には快進撃でサポーターを喜ばせたが、彼らがコンディションを崩すと、代役をこなせる選手がいなかった。中盤センターの質量は長年の課題だったのだが……。

 また、右ウイング、最終ラインの中央と右サイドの人材不足も改善できなかった。強化担当の責任者エドワード・ウッドワードの責任は重い。だからこそ、業界に顔が利くダイレクターの登用を急がなくてはならない。リオ・ファーディナンド、ダレン・フレッチャー、ディミタル・ベルバトフといった名前がメディアを賑わせているが、ダイレクターとしての実績は皆無である。スールシャール監督の経験不足を踏まえると、OBにこだわるべきではない。汚れ仕事も厭わぬ凄腕が必要だ。

路線変更された補強戦略

 この夏、ユナイテッドはスウォンジーからダニエル・ジェームズを獲得した。スールシャール監督主導による路線変更の一環だ。ここ数年はアンヘル・ディ・マリア(現パリ・サンジェルマン)やメンフィス・デパイ(現リヨン)、アレクシス・サンチェスなど、鳴り物入りでやって来た選手がことごとく失敗している。大金をドブに捨てたケースもある。

 この現実を考慮し、スールシャール監督は今夏のメインターゲットを英国の若手に切り替えたという。ジェームズのほかにはドルトムントのジェイドン・サンチョ、ウェストハムのデクラン・ライス、クリスタルパレスのアーロン・ワン=ビサカ、ニューカッスルのショーン・ロングスタッフなどをリストアップ。名前や実績に頼らず、一気に世代交代を図ろうとしている。

 こうした新進気鋭にメイソン・グリーンウッド、エンジェル・ゴメス、タヒス・チョンといった下部組織出身の若手を含め、4~5年のスパンで再建を図る。これがユナイテッドの新プランだ。リバプールとシティとの間に生じた大差を、一気に縮める特効薬はない。

 もちろん、ベテランと中堅の力も必要だ。シティにはロッカールームをまとめたヴァンサン・コンパニ(新シーズンからアンデルレヒトのプレーヤー・マネジャーに就任)がおり、リバプールにはキャプテンのロールモデルとされるジョーダン・ヘンダーソン、生まれなからのリーダーであるフィルジル・ファン・ダイクまで擁している。

ポグバ、デ・ヘア、ルカクとは別れるべき

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ロメル・ルカク(左)とポール・ポグバ【写真:Getty Images】

 責任感を促すためにポグバをキャプテンに、との指摘も一部にはある。しかし、この男が怠惰であることはユナイテッド移籍後の3シーズンで判明した。責任を追わずに大金を稼ぎ、SNSで好き勝手に発信する。ジョゼ・モウリーニョ前監督の厳しさに閉口し、スールシャール監督の優しさに甘えるような男に、リーダーが務まるとは思えない。

 しかもレアル・マドリー移籍を希望し、今夏の中国ツアーに参加する意思がないことをフロントに伝えたという。来日した際にも「新しいチャレンジをするときがやって来た」と退団を示唆している。3年前の夏に費やした8900万ポンド(当時のレートで約115億7000万円)に近いオファーが届けば、そのビジネスは即座にまとめた方がいいだろう。

 そして心がユナイテッドから離れつつあるダビド・デ・ヘアとも、後腐れなく別れるべきだ。18/19シーズンこそイージーミスが増えたとはいえ、彼には幾度となく助けられた。そろそろ希望を聞いてもいいころだ。ポグバと異なり、デ・ヘアは功労者である。いくら感謝しても足りない。

 キャプテンだったアントニオ・バレンシアが退団し、ゲームキャプテンを経験したポグバとデ・ヘアは移籍濃厚だ。人望の厚かったアンデル・エレーラもパリSGに去っていった。アシュリー・ヤング、クリス・スモーリング、マティッチは年齢を重ねているだけだ。近年のユナイテッドを支えてきた選手たちがキャリアの岐路を迎えた。

 路線変更は賢明なプランだ。プライドと週給ばかりが高く、貢献度が低い選手、インテル・ミラノに心変わりしたロメル・ルカクのようなタイプは切り捨て、若手を軸に据える。かつて、バズビー・ベイブス(※1)は飛行機事故から立ち直った。ファギーズ・フレッジリングス(※2)は準決勝、決勝ともに奇跡的な展開でチャンピオンズリーグを制している。スールシャール監督もこう言った。

「ユナイテッドは何度だって蘇る」

※1バズビー・ベイブス
サー・マット・バズビーが育てた選手たちの呼称。ダンカン・エドワーズ、ボビー・チャールトンなどを指す。

※2ファギーズ・フレッジリングス
サー・アレックス・ファーガソンが育てた選手たちの呼称。和訳するとファギーのひな鳥たち。ポール・スコールズ、ライアン・ギグス、ガリー・ネビル、デイビッド・ベッカムなどを指す。

(文:粕谷秀樹)

【了】

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