マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍をしたのは…
コロンビアはこの日、フアン・クアドラードを除く10人を前節のカタール戦から変更してこの試合に臨んだ。普通に考えればメンバーを大幅に変更すれば、連携ミスが発生するリスクが高まる。ただしその不安は杞憂に終わった。
システムこそ4-3-3で同じだが、コロンビアはほぼサブメンバーで臨んでいる。ただしチーム全体にハードワークの意識が根付いているからか、基本的にディフェンスが安定していた。なおかつ守備面で際立った活躍をしたのは、中盤でプレーする26歳のグスタボ・クエジャールだ。
ブラジルのフラメンゴでプレーする173cmと小柄なMFは、中盤の底で常に目を光らせていた。相手のキープレイヤーに縦パスが入りそうになると、すぐさま体を寄せて相手に自由を与えない。非常にマークにつく範囲が広く、前線からプレスをハメに行く際には、相手ボックス付近まで追い込みボールを奪いきるシーンもあった。
他の中盤の2枚、エドウィン・カルドナやジェフェルソン・レルマもハードワークしていることもあって、コロンビアの中盤のフィルターが機能。パラグアイの前線にいい形でボールが入ることはほとんどない。結果、パラグアイのトップ下でプレーしたプレミアリーグのニューカッスルに所属するミゲル・アルミロンはこの日、ほとんど仕事ができないまま時間が進んだ。
対照的にクジャエールには、守備を頑張ったご褒美か、決定機までもが訪れる。
31分、コロンビアが前線からプレスをかけると、ラダメル・ファルカオがボールをカット。右サイドの高い位置でSBサンティアゴ・アリアスがボールを受けると、ボックス内でクジャエールにボールを渡す。ボックス内は相手DFが密集しており、角度のないゴールライン際まで追い込まれるが、放ったシュートは相手GKの股を抜けてゴール。貴重な先制点をゲットした。
試合が1-0で終わっていることも考えれば、攻守ともに活躍したクエジャールはマン・オブ・ザ・マッチ級の活躍だったと言える。
ハメスの決定機はVARに阻まれる
最終的には追加点は生まれなかったが、後半にもコロンビアに決定機が生まれた。58分からエース、ハメス・ロドリゲスが投入されたからだ。左足でボールをさばきながら試合をコントロールする司令塔は約30分の間に何度も決定機を演出した。
少なくとものそのうち二つは1点ものだった。一つは69分のシーンだ。ハメスはアウトサイドキックでボックス内にパスを送ると、それを受けた左ウイングのルイス・ディアスが見事ゴール。追加点かと思われたが、ディアスがトラップした際にハンドがあったとして、VARによる助言の後、主審が映像をチェックした結果、ゴール取り消された。
もう一つは91分、ハメスがハーフウェーライン手前でボールを受けると、ディアスがランニングを開始。コロンビアのエースがDFラインの裏のスペースにスルーパスを通すと、ディアスと相手DFがボックス内で交錯する。一度は主審がPKの判定をくだすものの、最終的にはVARによる助言の後、主審が映像をチェックした結果、こちらも取り消された。
疲労の観点もあってか、途中出場にはなったが、相変わらずコロンビア代表におけるハメス・ロドリゲスの存在感を再確認した試合になった。
一方で途中からエースの助力があったとはいえ、サブ組中心で勝利を収めた意味は大きい。全員のマッチフィットネスは向上しただろうし、クジャエールのように調子のいい選手を確認することもできた。サブの厚みは大会を勝ち進む上で重要だ。コロンビアのカルロス・ケイロス監督にとって、決勝トーナメントでとる采配の選択肢が増えたことを意味する。
1-0とロースコアな試合にはなったが、現在コパ・アメリカの優勝予想ではブラジル代表に次いで2番人気とも言われているコロンビアの、チームとしての強さを感じる試合になった。
(文・内藤秀明)
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