勝てば無条件でベスト8進出
森保一監督が率いる日本代表はコパ・アメリカ2019(南米選手権)初戦でチリに0-4と大敗したが、中2日で臨んだウルグアイ戦で三好康児が2得点をあげ、二度追い付かれたもの終盤のウルグアイの猛攻をしのいで勝ち点1を掴み取った。
招待国の日本とカタールを含む12カ国を3グループに分け、2位までは無条件で突破、3位のうち成績が上位の2カ国が準々決勝に進めるレギュレーションとなっている。C組の日本は2試合を終えて勝ち点1だが得失点差がマイナス4で、A組とB組の結果次第に突破の条件が委ねられていた。
そこからA組はブラジルがペルーに5-0で勝利、さらにB組ではコロンビアがパラグアイに勝利し、さらにアルゼンチンがカタールに勝利したことで、3位のパラグアイが勝ち点2となり、日本はシンプルに勝てば準々決勝に進出し、ウルグアイと引き分けたポルト・アレグレで開催国ブラジルと対戦することになった。またB組の結果により現在勝ち点0のエクアドルも日本に勝てば突破できる。引き分けとなれば日本を得失点差で上回るパラグアイが勝ち残るという状況だ。
その意味では日本もエクアドルも白黒をはっきり付けたい状況となるが、日本はここまでチリに4失点、ウルグアイに2失点しており、まずは失点しないことが重要になってきそうだ。森保監督とともに試合前日の記者会見に臨んだセンターバックの植田直通も「今まで失点が続いている中で、ゼロで行きたい気持ちがより強くなって、チームでも話しているし、ディフェンスラインでも話している」と語った。
森保監督はエクアドルの攻撃に関して「縦に速い危険な攻撃をしてくる。そこをまずはしっかり止めつつ、我々の良さを出して行きたい」と警戒している。
そのキーマンの一人は右サイドのアントニオ・バレンシアであることは疑いない。マンチェスター・ユナイテッドに在籍するエクアドルの英雄であり、個人能力に加えて仕掛けどころのポイントを知る選手だ。そのアントニオ・バレンシアはチリ戦では後半15分から出場しているが、状態に問題なければ日本戦はスタメンで出てくるはずだ。
日本が警戒すべきはA・バレンシアだけでなく…
そのバレンシアや10番のメナからのラストパスをフィニッシュに結びつける存在がエネル・バレンシアだ。チリ戦ではPKによる得点で代表での得点を29に伸ばし、アウグスティン・デルガドの持つ得点記録まで2と迫った。
そのことに関して「あまり気にしていない。チームが勝つことが重要だ」と語るエネル・バレンシアは国民の期待に対しても「僕としては1歩目からどんどんゴールを決めたいが、勝つために僕じゃなくて他のメンバーにも点を決めて欲しい。我々が受けてきたしうちに返事をするためにも」と期待の裏返しとして辛辣な声が強まる現状を得点と勝利で打破したい意欲を表した。
「ゴールをできる機会を作りたい。そのために取り組んでいる。チリ戦では中盤から前にかけてうまく行った」と語るエネル・バレンシアは174cmと大柄ではなく、空中戦に競り勝ってゴールに叩き込むタイプではない。しかしながら瞬間的な動き出しが鋭く、味方からのクロスやスルーパスのポイントを逃さない南米特有の狡猾さを持つストライカーだ。こうしたタイプは冨安健洋や植田直通がプレーするベルギーリーグにはほとんどいない。
まず彼のところに決定的なボールを出させないために左サイドバックの杉岡大暉がアントニオ・バレンシアを封じ、ボランチや右サイドバックの岩田智輝あるいは原輝綺がメナやロマリオ・イバーラなどに前を向かせないことが大事だが、いざ出てくるボールに対して冨安や植田が一瞬でも隙を与えないように、1対1の強さだけでなく駆け引きや集中力でも封じていきたい。
アントニオ・バレンシアとエネル・バレンシア。二人のバレンシアをいかに封じられるかに失点ゼロ、そして日本の勝利はかかっている。
(取材・文:河治良幸【ブラジル】)
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