マンマーク気味で守るペルー代表
「これぞ南米の大会」という一戦だった。ペルーは人に激しく当たる守備を見せ、ブラジルはそれ以上の個人技で翻弄した。開催国の個の力を見せつけられた一戦だったとも言える。
開始序盤から、ペルーはミドルエリア付近から激しくプレスをかける。ポジショニングよりも、とにかく人を潰すことを優先する守備を見せた。個々の球際は非常に強いので、ブラジルの選手たちはボールの保持こそできるものの自由は多く与えられない。
結果、視野が広いアルトゥールの逆をつくボール運び、エベルトンとガブリエル・ジェズスの両翼によるスプリント能力を生かしたドリブル突破で違いを作るものの、決定機には至らず止まる。
一方のペルーも、ブラジルのフィルミーノやコウチーニョが前線からプレスのスイッチを入れることで、なかなかボールを持つことができない。潰し合いの展開だった。
そんな中でブラジルがコーナーキックから12分に先制できたことは非常に幸運だったとも言える。チアゴ・シウバのフリックを最終的にはカゼミーロが押し込んだ。これでブラジルは優位に試合を進められるようになった。
19分の2点目はブラジル代表のハイプレスが実った形だ。フィルミーノが絶妙なタイミングでGKとの間合いを詰めると、ロングキックのカットに成功。ポストに当たったボールをブラジル代表ストライカーが足元におさめると、冷静にノールックシュートでネットを揺らした。
焦るペルー、余裕のブラジル
早すぎる2失点を喫したペルーは、リスクを冒して前に出る。プレスのスタート位置をミドルエリアより前に設定し、相手ボックス付近でもボール奪取にかかる。
ただしそれにも動じないのがブラジル代表だ。最終ラインから正確な縦パスを入ると、アルトゥールやコウチーニョがハイプレスをなんなく受け流す。仮に奪われたとしてもフィルミーノがノータイムで切り替えてボールを奪いにかかり、ジェズスや他の選手たちもそれに続く。
結果、ペルーがどれだけ懸命にハードワークしても、ほとんどブラジルがボールを握っていた。そんな流れで無慈悲にもブラジルが3点目を奪う。第1節ボリビア戦ではでは左サイドからカットインしてファーに強烈なミドルを叩き込んだエベルトンが、同じような形でボールを持ち込み、今回はニアに強烈なシュートを叩き込んだ。
個の強さが目立ったブラジル
この時点で勝負は完全に決まった。
53分にダニエル・アウベスが4点目を決めた頃には、前半からの無理がたたってペルーはガス欠状態になっていた。中盤のフィルターは機能せず、ブラジルの支配を止めることはできなくなった。90分には途中出場のウィリアンが左サイドからカットイン、ファーに内巻きのゴラッソを決めた。
欲を言うのであれば、アディッショナルタイムにゲットしたPKをジェズスが決めることができれば理想だった。ブラジルが誇る小柄な技巧派ストライカーは、ここまでゴールを決めていない。ジェズスも調子を上げることができれば、ブラジルとしては戦いの幅が増えるのだが、大勝でお祭り気分のブラジルにほんの少しだけ影を落とす結果となった。
とはいえブラジルの個の強さが目立った一戦だったことも確かだ。対人戦の優劣で勝負が決まることも多いこの大会において、あらためて一番の優勝候補であることを結果で示した。
(文・内藤秀明)
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