ウルグアイ戦回避の前田も練習参加
三好康児の2ゴールでFIFAランキング8位の強豪・ウルグアイを追い詰めた20日の2-2ドロー劇から一夜明けた21日。コパ・アメリカ2019に参戦している日本代表はポルトアレグレからベロオリゾンテへ移動し、24日のグループ最終戦・エクアドル戦に向けて調整を行った。
1日遅れて試合が行われた同組のチリ対エクアドル戦は、チリが2-1で勝利。2試合終了時点では、勝ち点6のチリが1位、同4のウルグアイが2位、同1の日本が3位、同0のエクアドルが4位となっている。
最終戦でウルグアイがチリに負け、日本がエクアドルに勝てば、勝ち点4で並ぶが、初戦で4失点している日本は得失点差で大きく不利。3位通過を目指すことになる。森保一監督も大会全体の戦況をチェックしながら、次の戦い方を決めていく必要があるだろう。
ベロオリゾンテでの初練習は市内にあるブラジル2部・アメリカFCのスタジアムで行われ、股関節の違和感でウルグアイ戦を回避した前田大然を含む23人全員が参加。川島永嗣や岡崎慎司ら前日のスタメン11人はクールダウンに務め、それ以外の12人が負荷の高い調整を行った。
前日8分間のプレーにとどまった久保建英も実戦形式に加わり、次のスタメン復帰をプレーでアピールしていた。ウルグアイ戦の内容がよかっただけに、次戦もそのスタメンがベースになると見られるが、チリ・ウルグアイ戦2試合連続先発の中島翔哉に代わって久保という可能性も大いに考えられる。久保と三好という両レフティが織りなすコンビネーションはぜひ見てみたいところだ。
「ピッチにおるだけでみんなを戦う気持ちにさせていた」
こうした中、前日の岡崎の1トップでの奮闘を目の当たりにした前田と上田綺世の両FWは大いに刺激を受けている。岡崎と22分間タテ関係を形成した上田が「体の使い方がうまくて、ボールが収まるし、収めて動きなおしてというストロングポイントがすごく出ていた。それに『戦い』という部分ではすごく戦えてたと思います」と言えば、ベンチから見守った前田も「ピッチにおるだけでみんなを戦う気持ちにさせていた」と神妙な面持ちで語る。
強豪相手に互角でバトルに行けるところは、国際Aマッチ118試合出場50ゴールという実績を誇る岡崎の真骨頂であるが、そういう部分がいかに大切かを若いFW陣が再認識したことは、非常に大きな意味を持つ。
とりわけ、前田に大きなインパクトを与えたのが、後半13分の三好の2点目のシーン。左サイドを上がった杉岡大暉のクロスに対し、岡崎は泥臭くニアを飛び出してつぶれ、GKフェルナンド・ムスレラの死角に入ると同時に、こぼれ球を拾った三好がフリーでシュートを打てるような状況を作った。「黒子の動き」がどれだけ重要かを身を持って示したのである。
「ボールが来なくてもニアに突っ込んでいくことでスペースが空く。僕が目指すのはああいうところ。FWなんで点を取らないといけないと言われますけど、自分が体を張ることがチームに点を取らせることにもつながる。綺世を含めてFW3人で話もしたけど、慎司さんがレスターでコンビを組んだジェイミー・ヴァーディーもそうだったと聞きました」と前田は岡崎から点取屋の矜持を直々に学んだことも明かした。
彼の場合は次戦もサイドアタッカーでの起用が有力だが、先輩のアドバイスと経験をエクアドル戦で生かすことはできるはず。自分が黒子になって久保や三好に点を取らせる、あるいは彼らからのリターンを受けて自分が決めるといったコンビネーションを大事にしてほしい。
ある意味「ゴールが奪えるゾーンに入った状態」に
上田は岡崎の代役かウルグアイ戦同様、タテ関係でプレーする可能性が高い。となれば、ヴァーディーのようにフィニッシュを担うケースが増えるはず。チリ戦では3~4度の決定的チャンスを外し、日本を勝利に導くことはできなかったが、「完全に切り替えたと言ったらうそになるかもしれないけど、それでも『点を取りに行けない』と弱気になるようではFWじゃない。FWは外すこともある。それが代表という責任のある場で起きてはいけないけど、僕は前回の出来事を反骨心に変えてトライしていきたいと思います」と背番号13をつける男は闘志を前面に押し出した。
確かに岡崎も代表50ゴールに至るまでは何度も何度も決定機を外してきたし、ウルグアイのルイス・スアレスとエディンソン・カバーニの世界的2トップ、あるいは上田が憧れるラダメル・ファルカオも同様だろう。積極的なチャレンジを繰り返し続けることで、彼らは少しずつ決定率を高め、ここ一番で点を取る勝負強さを身に着けてきた。そんな岡崎らの泥臭さを上田も大いに参考にしてくれればいい。メンタル面に負けないことが、若きFW陣にとっての最重要ポイントといっても過言ではないはずだ。
エクアドル戦はとにかく点を取らなければ勝てない。ウルグアイ戦で三好の2発が飛び出し、日本代表としては活気づいた部分も少なからずあるが、やはり本当に強いチームはFWに絶対的な点取り屋がいる。日本もそうならなければいけない。だからこそ、岡崎に加え、上田と前田の若い2人には結果が求められるところだ。
「得点になる時っていうのは、邪念を持ったり、余計に考えすぎるのもよくないし、無心になることも微妙に違う。いろんなことを考えながら無駄を省いて点を取ることに真っすぐになること。そういう状態になるのが大事だと思います」と上田は神妙な面持ちで語っていた。
ある意味「ゴールが奪えるゾーンに入った状態」に到達できるように、残された2日間の準備期間を最大限有効活用できれば、自然と結果はついてくる。次こそは森保ジャパンが誇るFW陣の爆発をぜひ見てみたい。
(取材・文:元川悦子【ベロオリゾンテ】)
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