フットボールチャンネル

穴になったエクアドルのセットプレー。日本代表に与えたヒント、キッカーより重要な3人目の動きとは?【コパ・アメリカ】

コパ・アメリカ2019(南米選手権)のグループリーグC組第2節、エクアドル代表対チリ代表が現地時間21日に行われ、1-2でチリが勝利した。2連敗となったエクアドルは次戦で日本代表と戦うが、ウルグアイ戦にも共通するある弱点を、チリ戦でも露呈していた。(文・加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

6人を変更したエクアドル

0622ecuador_chile
チリ戦に臨むエクアドルのスターティングメンバー【写真:Getty Images】

 ウルグアイに0-4で敗れた初戦から中4日でこの試合に臨むエクアドルは、メンバーを6人変更し、4-3-3の布陣を採用。一方で、日本戦に4-0で勝利している中3日のチリは、日本戦と同じメンバーとシステムでエクアドル戦に臨んだ。

 エクアドルは3トップがチリの最終ラインに積極的にプレスをかけるものの、チリは的確な判断と対人の強さを発揮しながら主導権を握る。一方でチリはハイプレスをせずにミドルゾーンでブロックを作り、エクアドルが中盤にボールを供給するや否や、両WGを含めた5人のMFが、猟犬のごとくボールを刈り取り、エクアドルに主導権を渡さなかった。

 8分、アウトスイングで蹴られたチリの右CKは、エクアドルの選手に当たってこぼれたが、ホセ・ペドロ・フエンサリダが走り込んで右足を振りぬくと、ボールはポストに当たってゴールネットに吸い込まれた。

 エクアドルは25分にPKを獲得。PA内にこぼれたボールに、エクアドルのジェクソン・メンデスが反応。メンデスは先にボールに触れたが、GKアリアスが出した手がメンデスの足に当たって倒してしまった。PKはエネル・バレンシアが真ん中に蹴り込み、エクアドルはスコアを同点に戻した。

 しかし51分、チリは右サイドからスローインでリスタートすると、チャルレス・アランギスのクロスはファーサイドにいたアレクシス・サンチェスのもとへ。フリーの状態で受けたサンチェスはこれを直接右足で合わせると、ボールはファーサイドのゴールネットへと吸い込まれた。

 2-1で勝利したチリは勝ち点を6とし、2位以上での決勝トーナメント進出を確定。2連敗で厳しい状況へと追い込まれたエクアドルは、2戦を通じて同じような課題を露呈してしまった。

エクアドルが露呈した弱点

 2つの得点シーンや、35分のCKでも見られたのが、ゴール前のセカンドボールへの対応の甘さ。ボールに対する意識が強すぎるのか、人につく意識が低いのかはわからないが、CKの競り合いでこぼれたボールに対して、バイタルエリアでチリの選手がフリーになるシーンが度々見られた。

 アレクシス・サンチェスが決めたチリの2点目のシーンでは、2人がゴール前に飛び込んだチリに対し、エクアドルは4人もの選手がヘディングを試みている。結果として、ゴール前での競り合いでは誰も触れずに、ファーサイドにいたサンチェスにフリーな状態でボールが渡ってしまった。

 振り返るとエクアドルは、初戦のウルグアイ戦で喫した4失点のうちの2点目と3点目はCKから生まれている。どちらも、ハイボールの競り合いに対しては人がつけているが、それ以外の選手は“傍観者”と化しており、最重要人物であるはずの、エディンソン・カバーニやルイス・スアレスをフリーにしてしまった。

 今大会の日本代表は中島翔哉がCKのキッカーを務めることが多い。ターゲットマンになるのは植田直通、冨安健洋、杉岡大暉、上田綺世(岡崎慎司)あたりだろう。この4人のターゲットマンはもちろん、バイタルエリアにこぼれたところを、3人目、4人目の選手がいかに反応できるかどうかがカギになるだろう。

日本も似た悩みを抱える

 日本にとっては朗報なのが、2戦連続で先発していたエクアドルのCBガブリエル・アチリエルが日本戦では出場停止となることだ。89分に、ハイボールの競り合いで高く上げた肘がビダルの顔に当たり、レッドカードの判定を受けている。

 34歳のアチリエルは180cmで、CBとしては上背がないものの、この日もセットプレーではビダルのマークを担当。セットプレーにおいては重要な役割を担っており、日本戦での不在はエクアドルにとっては大きな痛手になるだろう。

 この日のエクアドルは最終ラインでは自由にボールを持つことができたが、中盤でチリの激しいプレッシャーに遭い、ボールロストする場面が多くみられた。実際、データベースサイト『Whoscored.com』のデータを見ると、75.6%を記録したロベルト・アルボレダを除き、DF3選手のパス成功率は70%を切る結果になった。

 しかし、これはアルトゥール・ビダルをはじめとした世界屈指のチリの中盤の守備力があるからこそで、今の日本代表にチリと同じことを求めるのはナンセンスだろう。

 さらに忘れてはいけないのは、日本もセットプレーへの不安をかかえているということ。チリ戦の1失点目と、ウルグアイ戦の2失点目はともにCKから生まれたものであり、ともにアウトスイングで蹴られたボールを直接頭で決められている。

 日本の弱点の方が、どちらかというと個人の能力に依存する部分が大きい分、対策は難しいかもしれない。それでも、決勝トーナメント進出に向けて勝利が欲しい日本は、セットプレーから決定機を狙いつつ、守備では身体を張って、相手の攻撃を封じなければいけない。

(文・加藤健一)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!