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日本代表 5年前

柴崎岳、決勝T進出の鍵を握る男。ウルグアイ戦で成長を示したのは“若手”だけではない【コパ・アメリカ】

日本代表は現地時間20日、コパ・アメリカ2019(南米選手権)・グループリーグC組第2節でウルグアイ代表と対戦し、2-2で引き分けた。0-4で大敗を喫した初戦から大きな変化を見せた日本代表だが、東京五輪世代が中心のチームで成長を示したのは主将のMF柴崎岳だった。決勝トーナメント進出をかけた最終節エクアドル戦へ、その胸中を明かす。(取材・文:河治良幸【ポルト・アレグレ】)

text by 河治良幸 photo by Getty Images

完全アウェイでつかんだ勝ち点1の重み

日本代表
日本代表は現地時間20日、ウルグアイ代表と対戦し2-2のドローに終わっている【写真:Getty Images】

 日本代表はブラジル現地時間の20日にポルト・アレグレでウルグアイと対戦し、二度のリードを奪うもVARによるPKとセットプレーからのゴールで追いつかれて2-2で引き分けた。

 大善戦の中で勝ちきれなかったという見方もあるが、ほぼ完全アウェイの環境で怪我で欠場のベシーノをのぞきフルメンバーと言えるウルグアイに挑んで勝点1をもぎ取ったことは非常に大きい。

 この日もキャプテンマークを巻いた柴崎岳は終盤にしっかりと勝ち点1を取る戦いかたに切り替えたことについて「できてたと思いますよ」と振り返る。

「最後押し込まれる時間帯はみんなも疲れてましたし、まあまあこれは勝ち点1を現実に拾うことがベストなのかなと自分的にも思ってたんで、しっかりとみんな守備を全員でやっていたと思います」

 0-4の大敗をしたチリ戦で柴崎はチームがなかなかリズムに乗れない中で、容赦無く強度を上げてくるチリに勇敢なデュエルを挑み、ギリギリのところで食い止めるシーンが何度も見られた。

「僕らより数段、経験もそうですし能力的には僕らの方が上とは言えないので、かなりギリギリの戦いになることはわかってましたし、やっぱり個人的には若いチームを助けたかった」と語っていた。

 そのチリ戦の中でもU-22世代の選手たちは徐々に試合にフィットしているように見えたが、柴崎は「彼らも未体験のレベルだったでしょうし、相当いっぱいいっぱいだったと思いますけど、彼らなりにこういった相手にどう対応して行くか、対応を変えたりしていたと思いますし、もっと上を目指さないといけないので、この試合に関してアップデートして行くことが大事」と語った。

「メンタル的に落ちている時間もないですし、まずはしっかり回復して、ウルグアイ戦に勝つための最大限の準備をしていきたい」

 そう語り、中2日で迎えるウルグアイ戦に向けて気持ちを切り替えている様子だった。翌日にはサンパウロからウルグアイの国境に近いポルト・アレグレまで移動し、夜間にトレーニングを行った。

目を見張った顔つき。「若い選手、バカじゃないですしね」

 柴崎を含むスタメン組は回復を重視した軽めのメニューだったが、途中出場だった三好康児、安部裕葵、岡崎慎司を含むチリ戦の”サブ組”は非常に強度の高い練習メニューに汗を流した。

 目を見張ったのは彼らの顔つきだ。チリ戦で屈辱的な大敗になすすべが無かった彼らの顔つきは厳しく、浮ついた雰囲気が完全に無くなっていたのだ。ウルグアイ戦の後に振り返れば、そうした意識がスタメン組にも伝わり、競争意識と統一感をいい意味で引き上げたのではないかと考えられる。

「若い選手、バカじゃないですしね。自分たちがやらなきゃいけないことをチリ戦から学んで、練習からしっかり意識を持ってやっていこうというのは垣間見えてますし、それをなるべく続けて行ってほしいなと思いますし、そういったことを続ければ今日のような試合を演じることはいつでも可能だと思う」

 そう語る柴崎。ウルグアイ戦ではボランチのコンビを組んだ板倉滉がボールさばきでバタバタしたこともあり、そのカバーリングに意識を割くようなポジショニングをしていたが、周囲の状況を観察しながら前に出て起点となり、高い位置からボールを奪いに行く守備でもうまくオーガナイズしていた。

 三好の先制点をアシストしたパスは味方のスローインを大きく展開した形だったが「幅を使って自分たちのボールにする時間を増やそうとは思っていた」流れで生まれたものだった。

 そこから一度追いつかれ、さらにリードを奪ってからCKで追い付かれるという展開になったが「だいぶ前がかりになってきてくれたなと。そこで押し込まれているととらえるのか、こっちのチャンスととらえるかは表裏一体だと思いますけど、僕はどっちかというと出て来てくれる分、攻撃は楽になるかなとは思っていた」と柴崎は語る。

「ガチンコ勝負」。最も大事なエクアドル戦へ

柴崎岳
日本代表を主将として牽引する柴崎岳【写真:Getty Images】

 前線に経験豊富な岡崎慎司、最後方に川島永嗣が構えていたこともあるが、キャプテンマークを巻いた柴崎はチリ戦とも違い、落ち着いてゲームコントロールしていた。ロシアW杯ではキャプテンの長谷部誠とコンビを組み、中盤のゲームメーカーとしてグループステージ突破に貢献した柴崎だが、所属クラブのヘタフェではなかなか出場機会が無いだけでなく、攻守の舵を取るボランチとして構想されずにサイドハーフやセカンドトップで起用されていた。

 それでも森保一監督は昨年10月に“森保ジャパン”で初めて柴崎を招集した時に「全く不安視してないですね。賢い選手だと思いますし、そのポジションで求められるプレーをできると思いますし、状況に合わせてプレーができる選手だと思ってます」と信頼を寄せていた。くしくも相手の1カ国はウルグアイだったが、当時から森保監督の信頼をさらに高めて、キリンチャレンジカップとコパ・アメリカの両方でキャプテンを託された。

 チリ戦の前には「フルメンバーで来たかったのが率直な感想」と語ったが、正直な気持ちではあるだろう。しかし、こうしたメンバーの中でチームを引っ張って行く意識は強い。ウルグアイ戦を終えた柴崎は若手の成長について改めてこう語った。

「そんな中2日3日で変われるものじゃないと思う。でも変わっていってほしいと思っているのは僕も一緒です。チリ戦もそうですし、ウルグアイ戦を体験した人、見た人も含めて何を感じてるかっていうのはあの年代にとって大きな財産になると思うので、それは大事にしてほしいなと思ってますし、本当うらやましいし、彼らの年代でコパに来ることはなかったので、貴重な経験してると思いますしね、今大会だけではないと思いますね。今大会だけじゃなくて、終わった後にどれだけこのレベルを維持できるかっていう彼らの意識の部分が問われると思う」

 しかし、成長しているのは若手だけではないだろう。チームとしてなかなか乗れない中で奮闘したチリ戦、チームをオーガナイズしながら南米屈指の強豪に立ち向かって勝ち点1を掴み取ったウルグアイ戦。そして次に進むためのある意味で最も大事なエクアドル戦に臨む。

 ウルグアイ戦の翌日、軽めの練習を終えた先発組が早めに引き上げたが、柴崎はフェンスの外側からサブ組の居残り練習まで見守っていた。

「(エクアドル戦は)本当ガチンコ勝負だと思うので、僕らも1試合でも多く決勝トーナメントに行ってこういった南米の国とやれるチャンスをつかんでいきたいと思っている。プランの中ではここに勝つってところがあるんで、抜けるためには、この3試合の中で勝たなきゃいけない試合、間違いなく一番重要な試合になる」と柴崎。

 攻守の舵を取るボランチとして、若いチームをオーガナイズするリーダーとして着実に成長しているはずだが、今は目の前にある大きな試合でのパフォーマンスに注目したい。

(取材・文:河治良幸【ポルト・アレグレ】)

【了】

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