無策だった中島サイド
コパ・アメリカを戦うには準備不足、それが完敗につながった。
まず、チームとして戦えていない。個人的にA代表レベルにない選手が何人か含まれているのは、今大会に臨むにあたっての編成上の制約があるので致し方ない。コンビネーションもなく、攻撃が単発的だったのも想定内だろう。チームプレーを仕込めていない以上、この試合限定でも勝ち点をとりにいく戦略がなければ難しいが、それもなかった。
具体的には中島のいる左サイドの守備に関して、何の備えもなかったのは致命的だった。攻撃の切り札で自由に動く中島の背後は、これまでの代表戦でも常に弱点になっていた。ただ、これはクリスティアーノ・ロナウドのサイドが守備で弱点になるのと同じことで、このゲームでも最大の武器だった中島を起用しないわけにはいかない。しかし、ボール支配率で日本が圧倒できる試合ならともかく、コパ・アメリカではよくて五分五分である。中島サイドの守備面での弱点を放置するのは危険すぎた。
対策としては、4-5-1にしてボランチを3枚起用し、中島サイドをカバーする。あるいは4-4-2のまま左方向へのスライドを早くする。しかし、どちらの対策もあったようには見えなかった。主に中島サイドを担当した中山は1対1でも劣勢だったのに、スペースになだれ込んでくるチリ人を防ぐことはできず、日本は左サイドから崩されゴール前で防ぐ展開になっている。
25分あたりからチリが押し込む流れになり、日本はゴール前で跳ね返すだけでセカンドボールを拾えない。よく我慢していたが、CKから先制点を許した。54分には中盤のパスワークに振り回されて0-2と離される。日本ベンチはその間何の手も打たなかった。
決定機はあったが決めきれず
日本にチャンスがなかったわけではない。前半の中島はチリにとって最大の脅威だったはずだ。後半には消えてしまったが、中島の個人技は頼みの綱だった。ただ、日本の攻撃はドリブルが多く、その成功率もあまり高くなかった。久保、前田、上田が仕掛けて奪われていた。仕方ないことだが、手慣れたパスワークのチリとチームの練度の差は大きかった。
それでも、単発的に決定機は作れている。上田には4回の決定的チャンスがあった。いずれもゴール前でフリーになる能力を示したわけだが、GKとの1対1を決めきるにはプレー選択が素直すぎた。
久保、交代出場した三好、安倍も辛うじて爪痕をのこせた程度。チリが2点リードした後に引いたので、60分から攻め込めるようになったが、逆にカウンターから2点を追加される。中島、柴崎、冨安はA代表らしいプレーを見せたが、終始チリにコントロールされたゲームだった。
急造チームで臨んでいる日本にとって、コパ・アメリカはチーム力をテストする場ではない。経験を積むための大会だと思う。違う言い方をすると、内容はどうでもいいので不格好でも勝ち点をとりにいかなければならない。そのための準備が出来ていない初戦だった。
(文・西部謙司)
【了】