現役選手としての久保への助言は…
そして最後に、オルメド記者は久保にアドバイスをくれた。実は彼、記者でありながらスペイン2部B(3部相当)でマドリーのBチームと同じグループに入っているウニオン・アダルベ所属の現役選手でもある。来季はテルセーラ・ディビシオン(4部相当)への降格が決まっており「久保とプレーしたかったけれど、実現しないのは残念」としつつ、「3部」で生き残るための術を説いた。
「2部Bはクオリティは高いけれど、非常に特殊なリーグでもある。1つは環境面。ピッチ状態が素晴らしく良いスタジアムもあれば、劣悪なところもあり、地方に行くと人工芝の場所もある。そして2つ目は、若手が主体となる1部リーグの名門クラブのBチームが多くある一方で、経験豊富なベテラン揃いのアマチュアクラブも混在しているということだ。久保はそういう極めてタフなリーグに適応していかなければならない。あそこで活躍することは、キャリアにおいて非常に貴重な経験となるはずだ」
久保自身、現状を踏まえて「注目が集まっているとしたら、いいニュースを届けられればそれは2倍にも3倍にもなると思いますし、逆につまずいたらそこもいい意味でも悪い意味でも大きく取り上げられると思う。自分に残された選択肢としてはいい方に取り上げてもらうのがいいと思います」とコパ・アメリカに向けて覚悟を決めている様子。
バルサ出身選手としてのマドリー移籍、正式契約までの特殊な背景、明らかとなっている特別な契約……そういった「注目」を集める要素は数多くある。そんな中で久保は重圧と好奇の目に晒されながら、選手としてより大きく成長できるか。
世界を騒がせたあの移籍発表があった日の夜、ブラジル代表としてコパ・アメリカの初戦を終えたマドリーの“先輩”カゼミーロは言った。「おめでとう。昇格は簡単ではないが、トップチームの選手やスタッフはいつもカスティージャの選手たちをチェックしている」と。日本サッカー界に前例のない挑戦の日々がまもなく始まろうとしている。
(取材・文:舩木渉【ブラジル】)
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