南米らしい激しい中盤の攻防
アルゼンチンは2014年のブラジルワールドカップ、翌年のコパ・アメリカ、さらに翌年のコパ・アメリカ・センテナリオと、3大会連続で国際主要大会準優勝。コロンビアは、イラン代表を率いていたカルロス・ケイロス監督はAFCアジアカップ2019終了後に監督に就任したばかりだ。
コパ・アメリカでは、各グループ1位、2位通過の6チームと、3位になった3チームのうち上位2チームの、計8チームがノックアウトステージに進出できる。となると、この試合を仮に落としたとしても、パラグアイ、カタールを相手に勝ち点を積み重ねれば、グループ突破は確実となる。
また、決勝まで進むと仮定すると、23日間で6試合を戦う過密日程。この初戦にコンディションのピークを持ってくることは考えづらい。そのため、大会屈指の好カードではあるが、リスクを冒さない静かな試合展開になるのではないかと予想していた。
しかし、いざ試合が始まると、予想に反して激しい攻防が繰り広げられた。南米サッカーらしいといえば、そうなるのだが、最終的には、“南米らしい“、実に7枚のイエローカードが提示される試合となった。
前半は62.4%がミドルサード(中盤)でプレーされたというスタッツからもわかるとおり、中盤での攻防が多くなった結果、前半はコロンビアがシュート5本、アルゼンチンがシュート1本と、両チームとも多くのチャンスを作ることはできなかった。
勝負を決めた交代選手
勝負を分けたのは交代策だった。ロヘル・マルティネスがハメス・ロドリゲスからのロングパスを左サイドで受けると、カットインして右脚を一閃。ペナルティエリアの端から弾丸シュートを決めた。
さらにはドゥバン・サパタが試合を決める。同点を狙い前がかりになるアルゼンチンに対し、サパタがボールを持つと、相手のフィジカルコンタクトをものともせず、右サイドから中央へと切り込む。サパタは先制点を決めたマルティネスへパスを出し、ペナルティエリアに侵入。ボールを持ったサパタは左サイドを駆け上がるジェフェルソン・レルマにボールを預けると、レルマはゴール前に鋭いクロスを出し、サパタがゴールへ押し込んだ。
負傷したルイス・ムリエルに代わって14分に入ったマルティネス、フアン・クアドラードに代わったレルマ、そしてラダメル・ファルカオと交代したサパタ。交代で入った3人が得点に絡んだコロンビアが初戦を取り、グループステージ突破に大きく前進した。
アルゼンチンの早期敗退も…
アルゼンチンはリオネル・メッシと、ジオバニ・ロ・チェルソの2人のレフティーが右サイドでボールを持っても3、4人目の動きが少なく、崩すことができず。また、相手のMFも引き連れて中盤にメッシが下りても、その空いたスペースをアンヘル・ディ・マリアやセルヒオ・アグエロが連動することもなく、決定機と呼べるものはほとんどなかった。
右サイドに攻撃が偏っていたアルゼンチンは、後半開始と同時に左サイドのアンヘル・ディ・マリアに代え、ロドリゴ・デ・パウルを投入。左利きのディ・マリアと違い、ゴールに向かってプレーできる右利きのデ・パウルを使うことで、敵陣左サイドでボールを持つ機会は増えたが、劣勢を覆す効果的な交代にはならなかった。
メッシが蹴った5本のコーナーキックも、シンプルにゴール前に入れるだけ。ダビンソン・サンチェス、ジェリー・ミナといったプレミアリーグでしのぎを削るディフェンダーに対し、高さでアルゼンチンは分が悪かったにもかかわらず、工夫はほとんどなかった。
敗れたアルゼンチンだが、さすがにグループステージ突破はできるだろう。しかし、メッシ頼みですらない、攻撃の形がほとんど作れなかった今日の試合を見る限りでは、早々に敗退してもおかしくはないだろう。
コロンビアの不安材料
コロンビアは勝利したものの、激しい攻防から4枚のイエローカードをもらってしまった。エースのファルカオ、中盤のキーマンとなるクアドラード、2点目を決めたサパタとアシストしたレルマだ。主力の2人と途中出場で結果を残した2人が累積警告リーチとなった。
しかし、次戦のカタール戦で勝利すれば、1位通過が確定する可能性もある。行為自体の是非は置いておいて、試合展開によってはカタール戦の終盤に“うまく”イエローカードをもらい、3戦目が出場停止になるといった“戦略的”マリーシアを使うことも考えられるだろう。コロンビアとしても、2戦目で大差をつけられれば、ハメス・ロドリゲスらの主力も3戦目で温存することができる。
グループステージ屈指の好カードとなった試合は、両チームにとって不安材料を残す試合となった。
(文・加藤健一)
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