悲願を果たせるか
アルゼンチン代表にとっての悲願は、リオネル・メッシにとっての悲願でもある。そういっても過言ではないだろう。
バルセロナで数多くのタイトルを獲得し、バロンドールも幾度となく受賞した世界最高のレフティーだが、未だ果たせていない目標がある。それこそ、アルゼンチン代表としてのタイトルだ。
2014年ブラジルワールドカップでは決勝まで辿り着いたものの、最後の最後でドイツ代表に敗れ、トロフィーを掲げることはできなかった。さらにコパ・アメリカ(南米選手権)でも2015、2016年大会と決勝まで生き残ったが、どちらもチリ代表を前に屈し、準優勝。もっと言ってしまえば、コパ・アメリカにおけるアルゼンチン代表は過去5大会のうち4度決勝に残りながら、すべて準優勝となっているのだ。どうにもタイトルを取ることができない。
そのため、今回のコパ・アメリカはなんとしても優勝を果たしたいところ。それを最も強く願っているのが、アルゼンチン代表を主将として率いるメッシであることに間違いはないだろう。
そんなアルゼンチン代表を率いるリオネル・スカローニ監督は本大会へ向けメンバー23名を招集した。メッシ、セルヒオ・アグエロ、アンヘル・ディ・マリア、パウロ・ディバラ、ラウタロ・マルティネスら相変わらず攻撃陣は豪華であり、このあたりの破壊力は世界でもトップクラスのものがあると見ていいだろう。
もちろん優勝へのカギを握るのはこの超強力攻撃陣ということになる。彼らが抜群の破壊力を継続して発揮できれば、アルゼンチン代表もより高い場所へとたどり着くことが可能だろう。
だがもちろん、課題がないわけではない。むしろ今の同チームは、不安要素が山ほどある。
不安な守備陣。一度崩れると…
まず1つめの課題は「守備の安定感」である。メッシ、アグエロらを揃える攻撃陣とは反対に、アルゼンチン代表の守備陣は決して強固とは言えない。ニコラス・オタメンディこそ経験豊富な選手ではあるが、その他のDFはアルゼンチン代表としてのキャリアが決して豊富とは言えず、このあたりはかなり不安だ。
本大会ではオタメンディとヘルマン・ペッセッジャがCB、左SBにはニコラス・タグリアフィコ、右SBにレンソ・サラビアが入ると思われるが、ペッセッジャはここまで7試合、タグリアフィコ13試合、サラビア3試合とやはり代表でのキャップ数が少なく、大舞台でどれほど力を発揮できるかは不透明だ。攻撃陣がいくら力を出しても、守備陣が踏ん張り切れなければアルゼンチン代表は早期敗退を喫してもおかしくはないだろう。
ロシアワールドカップでも見受けられたが、アルゼンチン代表の守備は一度崩れたら立て直せないという癖がある。同大会では一度もクリーンシートを果たせずに終わっており、4試合で9失点という成績を残してしまった。
ロシアW杯後の国際親善試合では守備の安定感を取り戻したかにも思えたが、今年3月に行われた国際親善試合のベネズエラ戦では、2点を先に奪われ、その後1点を返すも再び失点を喫し、1-3で敗れている。先制点を奪われたら大崩れしてしまうといった癖は、早急に改善が必要だ。
まもなく開幕するコパ・アメリカでは何より守備の安定感が求められることになるだろうが、まずはグループリーグ3試合でそのあたりを見極めたい。
ロシアW杯でも見られたら深刻な問題
ここまでは守備の課題を挙げたが、アルゼンチン代表の攻撃陣にももちろん課題はある。それが“メッシ依存”からの脱却だ。
ロシアW杯でも散々見受けられたこのメッシ依存。攻撃時、ほとんどのボールを背番号10に預け、組み立て、崩し、フィニッシュのすべての役割を課すというもの。とくにグループリーグ第1節のアイスランド代表戦ではこれでもかというほどメッシにボールを渡し、ほとんどの面で彼を頼った。
もちろんメッシは異次元の存在。他の選手が決して真似できないようなことを平気でやってのける恐ろしい人物だ。しかし、メッシとて3、4人に囲まれてしまったらそこから抜け出すのは難しい。しかもそれを、ほとんどの時間帯で求められる。さらに周りの選手の動きもないため、パスを出したあとに自分で再びボールを受けなければならない。メッシには疲労とストレスが溜まるばかり。これがメッシ依存の恐ろしい面なのだ。
コパ・アメリカでそうした課題をクリアできないとなると、ロシアW杯同様にグループリーグから苦戦を強いられることになるだろう。チームが苦しい状況に追い込まれたとき、自然とメッシにボールが行きがちになるかもしれないが、そこは臨機応変に対応したいところ。アグエロ、ディ・マリアらを揃える攻撃陣は豪華なだけに、メッシ依存から抜け出すのもそう難しくはないはず。本大会での改善に期待したい。
2大会連続で逃したコパ・アメリカのタイトル。そのリベンジの時が、刻一刻と近づいている。アルゼンチン代表に悲願はもたらされるのか、そしてメッシは同国代表の一員として笑うことはできるのか。注目だ。
予想フォーメーション
▽GK
1 フランコ・アルマーニ(リーベル・プレート)
▽DF
17 ニコラス・オタメンディ(マンチェスター・シティ/イングランド)
6 ヘルマン・ペッセッジャ(フィオレンティーナ/イタリア)
3 ニコラス・タグリアフィコ(アヤックス/オランダ)
4 レンソ・サラビア(ラシン・クラブ)
▽MF
5 レアンドロ・パレデス(パリ・サンジェルマン/フランス)
18 グイド・ロドリゲス(クラブ・アメリカ/メキシコ)
16 ロドリゴ・デ・パウル(ウディネーゼ/イタリア)
11 アンヘル・ディ・マリア(パリ・サンジェルマン/フランス)
10 リオネル・メッシ(バルセロナ/スペイン)
▽FW
9 セルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ/イングランド)
【了】