ようやく訪れた出番は「再確認できた試合」
権田にとって2度目の海外移籍。2016年にオーストリア2部のSVホルンへ渡って以来の、選手人生をかけた挑戦。まっすぐにGKとしての高みを追求する姿勢は、30歳になった今も変わらない。かつてその愚直さが自らの心と体を蝕み、オーバートレーニング症候群によって歩みを止めなければならない時期もあった。
突如として止まってしまった時計の針を再び動かし、新天地の鳥栖でシュートを止めまくった。そうして見えてきた光の先で掴んだヨーロッパ移籍。自分と向き合い、己の心技体を磨くポルトガルでの日々は充実していた。
2019年5月17日。ポルトガル1部の最終節で、背番号16をまとった権田は移籍後初となる先発メンバーに名を連ねた。相手はリーグ4強の一角、ブラガ。結果的には0-2で敗れてしまったが、半年間懸命に取り組んできたことの成果を、ようやく実戦で確認できた90分間だったという。
「どういう形であれ試合に出るのは僕とってすごく大事なことでした。ただ負けましたし、結果を出すために自分はプレーするので、そこは良かったとは言えないですけど、半年間自分がやってきたことだったりとか、その方向性は間違っていなかったというのを再確認できた1試合でした」
それまでもU-23チームの試合に出場する機会が何度かあった。レベルは多少落ちるものの、そういった限られたチャンスの中で、日々チャレンジしてきたことを少しずつ発揮しながらトップチームでの出番を待っていた。「半年の準備期間」を経てブラガ戦に出場したことで、ようやく来季、シーズンスタートから競争に加わるためのスタートラインに立つことができた。
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