サッカーにおける「目的地の認識」
これを聞いて、長友が今年1月に行われたAFCアジアカップ2019の決勝トーナメント1回戦で、サウジアラビア代表に勝利した後に話していたことを思い出した。この試合で日本代表はボール支配率23.7%という近年稀に見る数字を叩き出していたが、最後はセットプレーから冨安健洋が奪ったゴールが決勝点となった。
「(ボールを)握らせているんだぞ、最後のところで締めて、集中していれば問題ないというメンタルの部分がピッチの中でも漂っていますよね。やっぱり強いチーム、ユベントスとかは特に、そういった雰囲気が漂っているんですよ。強いチームというのは、戦い方を変えられますよね。ポゼッションをやれなくても、勝てる方法があるというところですよね」
日本代表117キャップを誇る32歳は、「ポゼッションでサッカーするわけではないので、勝ったチームが強い、それだけですね」とも語っていた。これこそが「目的地であるゴールへの意識」につながる。まさに同じようなことを、7日の練習後にも口にした。
「結局、ボールを回すこと、ポゼッションすることがいいサッカーだと勘違いしている人も、日本にはたぶんたくさんいると思うんですよ。でもやっぱりそうじゃないよ、と。海外はまずゴールを取るためにどういうポジショニングをとるのか。どういうタッチをするのか。どういう走りをするのか。彼らはそれが自然とできているので。もう少し日本人も、そういう認識ができれば、世界基準になっていくと僕は思っています」
長友が体感したユベントスの強さにもつながる。仮にボールポゼッションができなくても、その中でゴールへの最適な道筋を見出し、全員が一丸となって立ち向かって最後はしっかり勝っている。試合の中で到達すべき場所は、いつだって「ゴール」。この考え方は、長友の専属トレーナーを務める鬼木祐輔氏が提唱する「目的地の認識」そのものだ。
サッカーにおける目的地は「ゴール」。ピッチ上でのプレーは、全てそこから逆算して判断していく。自分がボールを持っていない時に、パスを受けるためにボールホルダーへ寄っていくのか、あるいは囮となって走ってスペースを作るのかといった選択肢が生まれたとする。
おそらくこれらはどちらも正しい。だが、最終目的地が「ゴール」であることを認識したうえで、そこにたどり着くまでの道筋としてどちらが正しいかは状況によって変わる。パス受けようと寄っていったら、ある時はマークも一緒に引き連れてしまってボールを失うかもしれない。囮になって走っても、それによって生じたスペースに気づいてもらえないかもしれない。