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リバプールに栄冠もたらした奇跡の男、ディボック・オリギ。戦力外のFWが英雄となる物語

text by 内藤秀明 photo by Getty Images

バルサ戦で奇跡を呼ぶ。そして…

 フィルミーノに代わって出場することが多かったオリギだが、確かにピッチをさまようだけで、何も結果を残せない試合が多かった。オリギへの批判はクロップの起用法にまで波及し始めていた。

 そしてそんな批判も黙らす決定的な結果を、オリギは5月以降に残す。まずは5月4日に行われたニューカッスル戦、リーグ優勝を目指すうえで絶対に負けられない一戦だったが、後半中盤になっても2-2。元リバプール指揮官ラファエル・ベニテス監督率いるニューカッスルの強固な守備を攻略しきれずにいた。

 すると73分に投入されたオリギが決定的な仕事をした。83分のFKの場面、ジェルダン・シャキリのクロスをヘッドで流し込み重要な勝ち越し弾をゲット。勝利に貢献したのだ。

 そして4日後に行われたバルセロナ戦だ。1stレグを0-3で落とす苦しい状況下で、負傷離脱しているフィルミーノに代わって先発出場。するとオリギはチームに勢いをもたらす先制点と決勝進出を決める4点目を決めて、「アンフィールドの奇跡」を起こした。

 79分のアレクサンダー・アーノールドのクイックリスタートは本当に唐突で、シュートコースもそこまで空いていなかった。それでもノっている男は、冷静にネットを揺らした。

 もうオリギについて、批判をする外野はいなくなっていた。

 そして迎えたチャンピオンズリーグ決勝。開始2分という早すぎる時間帯に先制点をとり、リバプールは優位に試合を進めるものの、先制点が早すぎたがゆえにゲームコントロールが難しくなってしまった。後半はほとんどシュートすら放てず、完全にスパーズに主導権を渡してしまっていた。

 ソンフンミンやルーカス・モウラなど強力なアタッカー陣がリバプールに襲い掛かる。フィルジル・ファンダイクやアリソンなど、頼れる守備陣が体を張って守っている。彼らに対する信用はありつつも、どこか「1点差なら何が起こるかわからない」という不安が脳裏をよぎる。

 期待感と不安が交互に訪れる心臓が痛い展開から解放してくれたのが、またもやオリギだった。

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