世紀の一戦が心に刻まれた理由
そんな、強烈な印象が残っているこの一戦だが、オチを明かすと、実は、なんと現地はおろか、テレビでも、リアルタイムで見ていない。いや、見ることが叶わなかった。
この週は、パリで行われていたK-1のワールドGPの取材を担当していて、あの一戦の日も、筋肉むんむんのアリーナにいたのである。夜、取材を終えて会場を出ると、街中から「キャー!」とか「ウォー!」とか「ヒャー!!」という悲鳴のような歓声が聞こえてきたのだが、その時は、盛り場の賑わいかな、と思い、とにかくCL決勝戦の結果が気になって、まっしぐらに自宅を目指した。
家に着いて試合の顛末を知ってはじめて、「あーー! あの悲鳴は、バーのテレビで試合を見ていた人たちだったのか!」と気が付く始末(若い読者のみなさんは、「携帯で見ればよかったのに」と突っ込みたくなると思うが、当時はまだ、スマホは流通していない時代だったのだ)。
こんな世紀の一戦を、リアルタイムに見るチャンスを逃した無念さも合わさって、余計に、この試合への思いは深く心に刻まれている。
(文:小川由紀子)
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