絶大だった主将の存在感
この6分間で、風向きは完全にリバプール寄りになった。
こういう時のPK戦は、多くの場合、風上にいる者が勝つ。
GKイェジー・デュデクがアンドレア・ピルロとアンドリー・シェフチェンコ、2人の名プレーヤーのシュートを止める大活躍で、リバプールが見事優勝を決めた。
マルディーニやカフー、ピルロ、スタムやネスタ、ルイ・コスタ、シェフチェンコ、カカ、そして現監督のガットゥーゾら、いま思い出しても個性豊かなメンバーが集結していたこの時代のACミランは、個人的にも好きなチームだった。
ただこの一戦では、リバプールに神風が吹いた。
それにはやはり、主将ジェラードの存在が絶大だった。彼に引っ張られて、選手たち全員、気持ちが折れることなく、勝利を信じて戦い続けることができたのだ。
女子W杯ドイツ大会のときの、なでしこジャパンの元キャプテン、澤穂希さんの「苦しい時は私の背中を見なさい」にも相当しびれたが、強力なリーダーのもとにチームがひとつにまとまると、全員の気合が太いベクトルとなって、『勝利』という同じ方向を向くのだ、という姿を、このリバプールの戦いからも存分に見た気がした。
この年のバロンドールは、こんな奇跡的なCL優勝を実現したジェラード以外にないっ!と信じていたのに、受賞者はロナウジーニョで、ひどくがっかりしたのも思い出される……。
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