トッテナムを襲った2つの刃
クラブ公式サイトによればマウリシオ・ポチェッティーノ監督は試合後「PKは計画を完全に変えた」と話していたという。その言葉通り、開始わずか25秒で与えてしまったPKは、もちろん痛かった。そしてマネ、サラー、ロベルト・フィルミーノらが織りなす攻撃力、ファン・ダイク、ジョエル・マティプ、アリソンらで織りなす守備力。トッテナムにとって厄介なものとなった部分は、いくつもあった。
だがこの日、最もトッテナムの脅威となったのは、リバプールの最終ラインで活躍し続けているアンドリュー・ロバートソンとトレント・アレクサンダー=アーノルドの2人だ。
彼らは果敢な攻撃参加から正確なクロスを中央へ送り続け、チャンスを何度も演出。守備への切り替えも素早く、攻守両面で圧倒的な存在感を放った。
リバプールの両サイドバックは上がるタイミングもばっちりであり、マネやサラーが中に人を引き付けた瞬間にうまく顔を出すことができる。そうするとソン・フンミンやエリクセンといったトッテナムの攻撃的選手は守備に回らなければならない状況へと追い込まれる。
もちろんクロスボールをしっかりと前に跳ね返すことができれば、トッテナムにもカウンターのチャンスというものがより多く巡ってきたかもしれない。しかし、彼らのクロスはそれすらも許さないほど、鋭く、そして正確だった。トッテナムの4バックはクロスボールをコーナーキックに逃れるか、サイドラインに弾き返すのが精一杯。アレクサンダー=アーノルドとロバートソンのキックの正確性は、実はトッテナムのカウンターという部分を防いでいたということになる。これが直接的な敗因というわけではないが、厄介となっていたポイントであることは間違いない。
トッテナムの最終ラインを深くまで下げ、幾度となく鋭いクロスを送ってきたリバプールの両サイドバック。彼らの働きが、トッテナムを苦しめた最大の要因と言えるのかもしれない。まさにトッテナムの4バックという盾を横から突く刃のような圧倒的存在感であった。