奏功した守備的な戦い
リバプールは開始25秒、マネの浮き球のクロスがムサ・シソコの腕に当たり、PKを獲得。モハメド・サラーがこれを決め、前半2分に先制に成功した。
思わぬ形で先制に成功したリバプールは、ボールを捨てた。今季のリーグ戦平均62%を記録したポゼッション率はこの日なんと40%を切っていた。いつもであればつなぐ場面でも、この日はリスクを回避して、前線にロングボールを蹴ったり、タッチラインに逃れていた。
とはいえ、決して自陣に引きこもることはなかった。攻守の切り替えや運動量は、相変わらずの激しさだった。
アンカーのファビーニョの両脇を狙うトッテナムのデレ・アリやソン・フンミンに対しては、まわりの選手がすばやく反応。両SBが高い位置をとらないこともあり、全体的にコンパクトでバランスの取れた守備が可能になった。
果たして、前半はトッテナムにチャンスらしいチャンスを作らせなかった。
後半も前半と似た展開が続いたが、ルーカス・モウラを投入したトッテナムがチャンスを作り始める。前半枠内シュート0に終わったトッテナムが、後半だけで8本も記録。同点ゴールの可能性を感じさせた。
ディボック・オリギとジェームズ・ミルナーを投入したリバプールは、78分ごろにシステムを変更。中央はヘンダーソンとファビーニョで守り、サイドにミルナーとマネを置くことで、守備の安定を図った。
90分にはマネに代えてDFのジョー・ゴメスを投入。アレクサンダー=アーノルドを中盤に上げて、ゴメスを右SBに入れた。
『Opta』によると、この試合のポゼッション率35.4%(Opta算出)は、CL決勝戦で勝利したクラブとしては2番目に低い数字だという。
相手にボールを持たせ、自陣にブロックを作る。普段のクロップの言葉を借りれば、この日の、特に試合終盤のサッカーは「退屈なフットボール」と言えるかもしれない。
それでも、勝つためにいつもとは異なる戦い方を選んだリバプール。しかし、要所ではハードワークという強みを発揮したことで、90分間トッテナムにゴールを割らせることはなかった。