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EL決勝、チェルシー対アーセナルはなぜ3点差もついたのか? 完璧なはずの守備戦術が破綻した理由

text by 内藤秀明 photo by Getty Images

戦術ではなく個人レベルが決した勝負

 後半も変わらず前からボールを奪いにいったアーセナルだが、チェルシー側も徐々に慣れはじめた。マテオ・コヴァチッチやアザールがドリブル突破でプレスを突破できるようになっていったのだ。

 押し込まれるとアーセナルとしては苦しくなる。

 というのも第一に相手サイドバックへの守備対応の難易度が上がってしまう。ウイングバックは相手のウイングを意識して最終ラインに位置しつつ、危険な場面ではサイドバックにアタックする必要があるのだが、相手陣地にボールがある場合はリスクも少ないので躊躇せず前に出ることはできるものの、自陣だと様々な可能性が頭をよぎる。また押し込まれている状態というのは、時に陣形が崩れていることもあり、余計に迷いが生じる。

 またローラン・コシールニーとナチョ・モンレアルはパワータイプではなく、押し込まれた状態での空中戦がやや苦手である。

 アーセナルの1失点目はまさに危惧していたパターンから起こった。ボールがチェルシーの左SBエメルソンに渡ると、ボールホルダーはフリーなのだが背後にいるペドロを意識してかナイルズのプレスが遅れる。エメルソンはその隙を見逃さなかった。

 精度の高いアーリークロスをボックス内に送ると、中にいるジルーがコシールニーを抑えながら前に入ってダイビングヘッド。ニアに放たれたシュートは見事にネットを揺らし、チェルシーは49分に先制した。

 その後は戦術的な戦いというよりは個人レベルで勝負が決してしまった。2点目はナイルズのボールロストからショートカウンターを受けて失点。3点目もナイルズが少し不用意な体のぶつけ方をしてしまいPKを献上。アレックス・イウォビがスーパーなミドルを決めて1点返すものの、オーバメヤンが不用心なボールロストをしてまたもやショートカウンターから4失点目を決められた。

 逆の目線でいうと、このアーセナルのミスを確実に決め切ったチェルシーが素晴らしかったとも言える。

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