「憂い」を感じる労働者の町
リバプールは、いつもなんとなく灰色の雲がかかった、どんよりしたイメージの町だ。
そんな空と同じような色をしたマージー河がまた、哀愁をかもし出している。
河岸に立つと、地元出身のロックバンド、ジェリー&ザ・ペースメイカーズが歌った名曲『Ferry Cross The Mersey』(マージー河のフェリーボート)の調べがどこかから聞こえてくる(気がする)。
かのリバプールFCのアンセム、『You’ll never walk alone』を歌ったのも彼らだ。
ちょっぴり物哀しさを感じる労働者の町、音楽、フットボール。
リバプールには、イングランドのフットボール・タウンのエッセンスがぎゅっと詰まっている。
そしてリバプールFCには、そんな町の雰囲気と同じように、底抜けの明るさではなく、なんともいえない「憂い」がある……。
はるか昔のことになるが、この職について初めてのインタビュー取材が、当時リバプールの人気選手だったジェイミー・レッドナップだった。その頃一番好きな選手がレッドナップだったから、自分は世界一の幸せ者じゃないかと思った。
こういうことを言うと、「これだから女子は……」と呆れられそうではあるが、正直に言ってしまえば、ジェイミーとお話してみたいと思ったことも、この仕事を志したきっかけのひとつだった。
思い返せばこっぱずかしいが、そんな乙女な時代もあったのである。