裏目に出た起用法。登り調子が途絶えた要因
FW陣は大型のCFファビオ・バッツァーニと、シュートセンスの高いフランチェスコ・フラーキの2トップが柱。3、4番手としてスタートした柳沢は、開幕節アウェーのレッジーナ戦で途中出場した。
ポジションは、4-4-2の左サイドハーフ。後方からのスルーパスを呼び込んでダイレクトで左足シュートを放ち、ボールはGKの手を弾いた末にポストに当たる。インパクトを残した彼は、以降の試合でサイドの切り札として使われるようになった。
ワルテル・ノベッリーノ監督はそのスピードと技術を評価し、サイドでポジションを用意しようとした。もともとプレーの幅が広く、ドリブル突破やセンタリングなども器用にこなす。練習でも意欲的に取り組み、また人当たりの良さでスタッフにも、練習場に通いつめるドリアーノたちにも好かれるようになっていた。
左MFの1番手だったクリスティアーノ・ドーニがコンディションアップに苦しむ一方、柳沢はモチベーションを高め試合ごとに評価を上げた。そしてノベッリーノ監督は、第7節のミラン戦で賭けに出た。柳沢を左サイドハーフとして先発させたのである。
だが、それは完全に裏目に出た。FW出身、急ごしらえのサイドハーフは、相手にとってみれば組織守備の穴。名将カルロ・アンチェロッティ監督がそれを見逃すはずはなく、柳沢の担当するサイドを集中攻撃した。彼が左にいれば左を、右に入れ替えられれば右を攻撃。サンプは前半に1点を失い、柳沢はハーフタイムで交代を命じられた。
それを境に、開幕からの登り調子は途絶えた。再びベンチが定位置となる一方で、Bから這いあがったバッツァーニとフラーキはセリエAでも強力な2トップとして結果を出し続けていく。FWとしてチャンスが訪れない一方、シーズン後半では若手も成長し左MFとしての途中出場も少なくなってくる。