現代のサッカーに求められる「ロナウド」
「ヘヴィ級のアステア」
オランダの新聞はロナウドをそう表現していた。バルセロナのエースとしてカップウィナーズカップ決勝のためにロッテルダムに来ていた。
見出しの「アステア」は、華麗なダンスで魅了したハリウッド往年の大スター、フレッド・アステアのこと。1997年の話なので、アステアのたとえは古すぎる感じもしたが、「ヘヴィ級」との対比でそうなったのだろう。細身のアステアだからそこのステップワークを、ヘヴィ・ウエイトの選手がやっているという驚きを表現したわけだ。両立しえないものが両立していると。
ロナウドはバルサに1シーズンしかおらず、すぐにインテルへ移籍。そこで膝に重傷を負った。自身の速さに体がついていけなかった、リミットを越えてしまったような印象があった。2002年ワールドカップで復活を遂げたが、全盛期はバルサとインテルでの3年間だ。
現代のサッカーは「ヘヴィ級のアステア」を求めている。ロナウドがあまりしなかった守備さえ要求されている。日本対イタリアの前日に見た、マリのイブラヒマ・コネも大きくて速くて強いFWだったが、後半30分に負傷の影響で交代していた。
サッカーにケガはつきものではあるが、ゲームとプレーヤーの進化によって、気づかないうちに負荷が過大になっているのかもしれない。
(取材・文:西部謙司【ポーランド】)
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