もっとも印象的だったアスピリクエタの働き
そして、このチェルシーの守備意識が最も発揮されていたシーンは21分の場面だ。
相手のクリアボールを中央で拾ったルーカス・トレイラが前線のラカゼットへロングフィードを送る。背番号9は見事にチェルシーDFの背後を取ったが、中央へ絞っていたアスピリクエタに身体を寄せられ、最後はGKケパ・アリサバラガと交錯。チャンスであったが、シュートまで持ち込むことはできなかった。
トレイラがボールを持った際に、アスピリクエタは左サイドに位置していたコラシナツを完全に捨て、ラカゼットのマークを優先。クリステンセンは恐らくフランス人FWの存在を確認することができていなかったため、背番号28のカバーリング意識の高さがチームを救った瞬間であった。
もともと左サイドで攻撃が展開されていたため、右サイドバックのアスピリクエタが内側に絞るという動作に関しては、言ってしまえば普通のことである。だが、トレイラにボールが渡った際にフリーとなっているコラシナツへのマークを捨て、ラカゼットに張り付くといった判断の鋭さはスペイン人DFの能力と言えるかもしれない。あるいはチームとしてそうした守備の意識を徹底して行っていたからこその結果もしれない。
いずれにしても、アーセナル攻撃陣にとってはこうした一人ひとりの意識の高さが相当厄介なものとなっていたに違いない。オーバメヤン、ラカゼットに対するチェルシーの守備は、おおむね完璧だったと言えるのではないだろうか。
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