ウェリントンの脅威
ベルマーレ戦では前線が3トップ気味となり、中央には身長188cm体重90kgのウェリントンがそびえ立った。2013シーズンの途中から1年半ベルマーレに所属し、2014シーズンにはJ2リーグで2位となる20ゴールをあげたウェリントンの脅威は、当時から指揮を執る曹貴裁(チョウ・キジェ)監督が誰よりもよく理解している。
それまでの3バックを4バックに変え、身長174cm体重72kgの坂圭祐と187cm82kgのフレイレでセンターバックを形成させたのも、ウェリントンの脅威に対抗するためだろう。果たして、ヴィッセルは前半からウェリントンの高さを生かすようなロングボールを多用した。山口が言う。
「前半はウェリ(ウェリントン)へのロングボールからセカンドを拾えるか、拾えないかのシーンが多かったけど、後半はセカンドボールも拾えるようになり、そこから真ん中、真ん中だけじゃなくて、よりサイドを上手く使えるようになった。ダビ(ビジャ)や、(西)大伍さんが左右にかなり張っていたので上手くはまったし、全体的な距離感を含めて後半の方がはるかによくなった」
ウェリントンの強さと高さ、そしてポストプレーで味方を生かす上手さに、時間の経過とともに後塵を拝するようになったのだろう。ベルマーレの左右のサイドバック、杉岡大暉と山根視来もカバーのために中へ絞り気味となり、必然的に両サイドにスペースが生じるようになる。
ベルマーレの左サイド、ヴィッセルから見て右サイドは[4-3-3]の左ウイングに入った野田隆之介が引き気味になり、右アウトサイドの西大伍をケアする役目を負った。それでも綻びが生じてしまったがゆえに、54分には山口とのワンツーから西に右サイドを突破され、ウェリントンの先制ボレーを導く絶妙のクロスを上げられてしまった。
「やっぱりああいう形で、サイドでトライアングルを作って崩せれば一番いいと思う。前半はなかなかそういうのが出なかったけど、後半はいろいろなエリアで1人、2人と絡んだ崩しが見られたと思う」
山口の言葉通りに73分には、ポッカリとスペースが空いた敵陣の中央でパスを受けた山口がドリブルでもちあがり、ゴール前のウェリントンへパス。これが右足のヒールで絶妙に背後へ流され、以心伝心で走り込んできた三田啓貴が利き足の左足を豪快に振り抜いた。