決勝T進出へ、勝ち点3は必須
そして、もう1人のセントラルMFは中盤にどっしりと構えて中継役となり、両サイドバックは“3バック”に押し出される形で高い位置を取る。後ろから3人が支えていれば、サイドバックも背後をとられるリスクを気にせず前に出ていくことができる。
両サイドバックが高い位置で幅を確保することができると、両サイドMFは内側にポジションを取って前線の2トップとの距離を近くして細かいパスワークからのフィニッシュにつながっていく。この一連の人の動きがスムーズかつ頻度高く表現できれば日本の「やりたいこと」ができていると言える。
例えばエクアドル戦に先発した山田や郷家はウィンガー的な資質よりも、セントラルMFに近い能力を備えている。山田も「本来はインサイドにタイミング良く入って、中盤に厚みだったり、もっと日本らしくショートパスを多くしていきたいという志向もあった」と語っていた。彼のゴールも中央寄りのあいまいなポジションを取れていたからこそ相手のマークにズレが生まれ、その後もエクアドルのサイドバックとセンターバックの間をとる動きは効いていた。
とはいえ、こうして攻撃の組み立てをより意図したものに変えていくだけではメキシコには勝てない。影山監督が「核になる選手がいる」と述べた通り、右サイドに陣取る10番のディエゴ・ライネスは要注意人物だ。
今年1月にメキシコの名門クラブ・アメリカから、スペイン1部のベティスへ移籍して欧州進出を果たした18歳はイタリア相手にも危険な存在だった。途中出場が中心ながらベティス加入後の半年でリーグ戦12試合に出場した実力は本物。
左利きのドリブラーのため右サイドからカットインしてからのシュートやラストパスを、ノープレッシャーで許してはならない。日本の守備陣がライネスのいる左サイド(メキシコの右サイド)を堅く守れれば、メキシコの攻撃力は大きく削がれる。
勝てば3ポイントを上乗せでき、日本のグループリーグ突破は大きく近づく。個で違いを作れる突出した存在がいないのであれば、組織として対抗する。狙いを持った守備からボールを奪い、意図した形のフィニッシュの場面を作りたい。自分たちの狙いをピッチ上で表現して、さらに勝利をつかむことができれば世界の舞台で若きサムライたちは大きな自信を手にすることができるだろう。
(取材・文:舩木渉【ポーランド】)
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