「世界を相手にどんなプレーをできるか、すごく楽しみ」
どんな形でもゴールを。山田はその気持ちだけで右足を振り抜いた。走り込んでいたのも、前半はほとんど侵入できなかったスペース。本能でゴールの生まれそうな場所を感じ取り、無心でシュートを打っていた。サプライズ的な先発起用に、しっかりと結果で応えて見せたのである。
山田はU-20ワールドカップでの日本代表招集が決まった日に、こんなことを言っていた。
「自分が世界を相手にどういうプレーをできるかというのは、すごく楽しみです」
世代別代表として日の丸を背負って世界一を争う場に出るのは、今回が初めて。だからこそ「ピッチに出たら国を代表しているので、体を張って戦ったり、みんなのやることは変わらない」と全力で勝つためのプレーに徹する姿勢を出しつつも、「注目度の高い大会だと思うし、そこで活躍したら個人としても注目される。そういう意味では活躍したら自分の可能性を広げられる大会だなと意識はしています」と。
もし欧州クラブのスカウトが日本対エクアドルをポーランドの地方都市まで見に来ていたとしたら、個々のタレントではエクアドルの選手たちに目がいってしまっただろう。とはいえゴールを決めたことで、「ジャパンのヤマダ」も印象には残っているはずだ。
「本当に勝ちを目指して臨んだ初戦だったので、1点取って大喜びというわけじゃなくて、やっぱり次の1点、次の戦い方にフォーカスしていたので、すぐ切り替えていた。次は決勝点だったり、勝てるゴールでみんなでたくさん喜びたいと思います」
横浜F・マリノスで育った山田は、影山監督率いるチームでは“サブキャスト”の1人に過ぎなかった。とはいえ信頼は厚く、ワールドカップの大一番での先発を勝ち取りゴールまで決めた。それでも決して満足はしていない。
「次はどこで出るかも、どういうタイミングかもわからないですけど、こうやって(自分の)パフォーマンスを表現できるというのは見せられたと思うので、自信を持って、次もピッチに立ったら勝利に貢献できるように頑張りたい」
横浜から世界へ。何でも器用にこなすマルチな才能の活躍が、決勝トーナメントへの可能性を広げた。次は誰がヒーローになるか。若き侍たちが世界へ羽ばたく、人生をかけた挑戦はまだ始まったばかりだ。
(取材・文:舩木渉【ポーランド】)
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