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日本代表 6年前

なぜそこに山田康太!? 同点弾を引き寄せた献身、W杯初戦サプライズ先発の理由【U-20W杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

同点弾は「本当にあんまり覚えていなくて…」

山田康太
山田康太は“ゾーン”に入った状態でシュートを打っていた【写真:Getty Images】

 嫌な時間帯に失点して迎えたハーフタイム。日本のロッカールームでは影山監督から檄が飛んだ。

「相手は何も来ていないぞ! 何でビビってボールを動かさないんだ! 田川(享介)とか(斉藤)光毅の裏がある。地上でサッカーをするのが俺らじゃないのか?」

 ここで選手たちの目が覚めた。いつも通りの自分たちを気づかないうちに見失っていた。キャプテンの齊藤未月は前半と後半をつなぐ15分間で「『どうなろうとまずしっかり自分たちのサッカーをするんだ』と思えた」と語る。山田も「自分たちで鼓舞しあって前向きに取り組めていたので、本当に不安要素はなかったし、必ず追いついて逆転しようという気持ちでいた」と切れかかっていたエンジンに再点火した。

 後半、コーナーキックから不運な形で与えてしまったPKのピンチはGK若原智哉のビッグセーブで乗り越えた。そして徐々に本来の姿を取り戻し、田川の裏のスペースや交代出場していた宮代の巧みなポジショニングを有効活用してエクアドルのゴールに迫る回数を増やしていく日本。

 誰も諦めていなかった。68分、ついに山田が主役となる時間がやってくる。途中出場の西川潤がヘディングでペナルティエリア内に入れたボールに、田川が食らいつき、こぼれ球は伊藤洋輝のもとへ。だが後ろから相手選手につつかれて再びボールが宙に舞うと、ゴール前に突っ込んだ宮代がGKと交錯。

 エクアドルの守護神のパンチングで掻き出されたかに思われたが、2列目から走りこんでフリーになっていた山田がボレーシュート。ボールはブロックに入った相手DFに当たって大きく跳ね上がり、無人のゴールネットに吸い込まれていった。

「本当に何であそこにいたかわからないですけど、前に行って、自分のところに(ボールが)転がってきて、かなり集中力高くミートを意識して……本当にあんまり覚えていなくて、気持ちで押し込んで、ゴールに入っていくのだけが覚えているなっていう。

なんか自分でもいろいろな景色が見えすぎていたので、ボールだけを見て、周りの状況があんまりわからなくて、気付いたらボールが入っていて、という感じでした。本当に決めないといけない状況だったので、そういう『ゾーン』じゃないですけど、いい集中だったかなと思います」

 なぜあそこでフリーになっていたのか。エクアドルの選手たちはボールしか見ていなかった。菅原由勢からの縦パスを受けて宮代が反転した瞬間から対応が後手になり、田川や西川のプレーに意識が集中してしまった。前半はほとんどゴール前に進出していなかった16番が、あの位置にフリーで立っていることなど想定もしていなかっただろう。

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