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日本代表 6年前

なぜそこに山田康太!? 同点弾を引き寄せた献身、W杯初戦サプライズ先発の理由【U-20W杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

教訓になった不用意なファウル

 あれは飄々としたいつもと変わらない受け答えで核心から我々を遠ざけようとしていたのか、それとも単に天然なだけなのか。いずれにしろ高い吸収力を発揮してクラブでのそれとも違う役割に求められるものをいち早く理解した山田は、良い意味でも悪い意味でもエクアドル戦のキーマンとなった。

 影山監督は「決して相手にボールを持たれることを想定して組んだわけではない」と述べたが、実際には前半の序盤からエクアドルに主導権を握られ苦しい状況が続いた。攻撃力が自慢の両サイドバックを高い位置に上げ、アタッカーたちも積極的に仕掛けることで日本を押し込んでいく。

 そんな流れの中で「エクアドルはいいチームだぞというのを強調しすぎて前半のようなパフォーマンスになってしまった」と指揮官が悔やんだ通り、チーム全体に硬さが見られ、苦し紛れのロングボールで前線の田川亨介を狙うような単発の攻撃でしか前に出ていけなくなってしまった。

 守備に走らされる時間が長かったが、いつも通りのプレーを見失いがちだったチームにおいて、元来物怖じしない性格の山田に迷いはなかった。左サイドハーフに入った“ハマのプリンス”は4-4-2のブロックで中央に侵入を許さぬよう絞り気味にポジションを取るだけでなく、相手が繰り返すサイドチェンジにも必死についていった。

 とはいえ“悪い意味”での試合を象徴する選手にもなった。0-0のままハーフタイムに突入するかと思われた45分にオウンゴールでエクアドルに先制点を奪われている。そのきっかけとなったフリーキックを与えたのが山田だった。

「後ろの左サイドバックの東(俊希)が球際にいって、入れ替わられちゃって、カウンター気味に行かれて、自分は追いつけそうだったんですけど、南米特有の速さや強さもあって、ここで止めないと危ないかなと思っちゃって。クリーンに(ボールを)取ろうと思ったんですけど、(手を)かけちゃった」

 山田は自陣ゴール方向へボールとともに走る相手に振り切られかけ、センターバックの小林友希がカバーに入っていたにもかかわらず、とっさに手を使ってしまった。ただ、そのファウルから失点につながったものの「イエローカードをもらったし、ここで学んだので、次に生かせるかなと思います」と決して下は向かなかった。

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