先発起用は2日前に決まっていたが…
一瞬も気の抜けない試合だった。23日に行われたFIFA U-20ワールドカップ2019のグループリーグ第1節、日本対エクアドルは1-1のドローで終わった。
まず先発メンバーの書かれた1枚の紙が配られた瞬間から驚きがあった。ポーランド入りしてから行われたU-20コロンビア代表との練習試合に先発出場したメンバーが中心になると思われていたが、何人か予想とは異なる選手が入っていた。
直前2日間の練習は冒頭15分間を除いて非公開だったため、戦術確認などの詳しいことは全くわからなかったが、影山雅永監督はU-20日本代表の選手たちに南米王者エクアドルを相手にする際の明確な策を授け、閉ざされた扉の内側から我々報道陣をも出し抜いた。
そして結果的に見れば、個々の能力で上回られていたと言って間違いない相手と勝ち点1を分け合えたことはポジティブに捉えられる。ワールドカップの初戦という難しい状況下で、グループリーグ突破への望みを大きくする引き分けだった。
影山監督はエクアドル戦の先発に、宮代大聖や藤本寛也ではなく、彼らより守備でもハードに動いて貢献できるであろう山田康太と郷家友太を選んだ。これは今までの流れをあえて変えないと思われていた中で、小さくない驚きだった。山田は「先発で出ると決まった時から、正直すごい気持ちも高ぶっていて、本当に興奮が抑えられないくらいで(試合を)迎えた」と語っている。
ワールドカップの初戦に先発すると監督から伝えられたのは「おとといくらい」とも明かした。その「おととい」だった21日の練習で彼は「まだどこで出るかは全然わからないですけど…」と高鳴る鼓動を抑えながら報道陣を煙に巻いていたのだ。
実際、コロンビアとの練習試合では「中央」しかやっていなかったところから、エクアドル戦は「左サイドMF」での先発起用。4-4-2のシステムはこれまでと変わらないとはいえ、課されるタスクは全く違う。確かに過去の合宿ではサイドで試されたこともあったが、あくまで得意とするのは「中央」でのゲームメイクである。
さらに言えば昨年のU-19アジア選手権など、影山監督の下で何度も代表合宿に招集されながら「戦術的なことで詳しいことはまだやっていないし、どういう戦い方をするのかも事前合宿で詰めていくのかなと思っている。自分がどこでプレーするかとかもあんまりイメージが湧いていない」とU-20ワールドカップ出場メンバー選出時に語っていた男だ。