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日本代表 6年前

闘莉王が説いた「弱者の戦い方」。南アW杯が繋いだ日本サッカーの未来【日本代表平成の激闘史(10)】

シリーズ:日本代表平成の激闘史 text by 元川悦子 photo by Getty Images

短期間での劇的な変化

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松井大輔(左)、駒野友一(中央)、阿部勇樹【写真:Getty Images】

 試合が少し落ち着いた前半17分、本田が代名詞の無回転FKを叩き込んで先制点を奪う。そして31分には遠藤もFKを決めて2-0で前半を終了。セットプレーという武器の炸裂でデンマークを突き放す。

 後半にトマソンに1点を奪われたものの、終盤には本田からのパスを受けた途中出場の岡崎がダメ押しとなる0点目をゲット。3-1で快勝し、日本はまさかの1位通過を成し遂げた。

 6月29日のラウンド16の相手はパラグアイ。場所もヨハネスブルクからほど近い首都・プレトリアで、移動負担も大きくない。選手たちはいい状態で大一番に挑めた。だが、ボール支配で日本を上回ったパラグアイは堅守速攻の強みを出せずに苦しみ、逆に日本は松井や本田が一瞬のスキを突いてビッグチャンスを迎えるも決めきれない。

「点を取って上へ進む」という強い意志を持った岡田監督は、後半に阿部を下げて中村憲剛を投入。延長後半には玉田圭司も送り出し、攻めを厚くして1点を狙いに行った。が、相手の堅牢な守りをこじ開けられず、試合はスコアレスのままPK戦へ突入した。

 先攻はパラグアイ。2人ずつ成功し、3人目で明暗が分かれた。相手が決めた直後に出てきた駒野はいつも通り、冷静にシュートを蹴ったはずだった。が、ほんの少しボールが上に飛び、クロスバーを直撃。これが致命傷になって日本は敗れた。

 号泣する駒野を松井が抱き寄せ、「胸を張って日本に帰ろう」と励ましたが、本当にこの大会の日本は闘志あふれる集団だった。もちろん本田や長友ら若い世代の台頭も大きかったが、「短期間でチームは劇的に変化できる」という事実を彼らはしっかりと実証してみせた。この経験が8年後の戦いにつながったことは言うまでもない。

(文:元川悦子)

【了】

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