日本代表の森保一監督【写真:田中伸弥】
コパ・アメリカ2019(南米選手権)に挑む日本代表メンバーが24日、発表された。初選出選手は13人だが、前日のキリンカップに大迫敬介、中山雄太、久保建英が選ばれていたことから実質的には16人と言っていい。
これまで森保ジャパンで主力を担っていたのは冨安健洋、柴崎岳、中島翔哉の3人のみ。ベテランの川島永嗣と岡崎慎司が復帰したとはいえ、若手が中心で、真剣勝負の大会に挑むのは不安になるメンバー構成だ。
森保一監督は「若い選手がコパ・アメリカという素晴らしい大会に出られることによって、選手の成長につながり、来年の東京五輪にもプラスになると思う。我々は東京五輪で金メダルを取ろうと思っている。A代表で戦えるレベルでないとその目標は達成できない。1試合でも多く勝ち進み、選手が厳しい戦いのなかで成長してくれることで、A代表の活動がプラスになればいい」とメンバー選考の意図を語った。
2020年東京五輪はかねてより日本サッカー協会が目標としている。しかし、コパ・アメリカが果たして五輪への強化にふさわしいだろうか。南米各国は当然ベストメンバーを組んでくる。経験の薄い日本の若手選手とは実力差があまりにある。世界を知るにはいい機会だが、歯が立たなすぎる相手との試合では大きな成長が望めないだろう。
五輪を優先するのであれば、時期が重なるU-20ワールドカップやトゥーロン国際大会で研鑽を積んだ方が選手やチームが順調にステップアップできるはずだ。そうしなかったのは、コパ・アメリカをめぐる苦しい台所事情が先にきていたからではないか。
コパ・アメリカはメンバー発表前からメンバー構成が厳しいものになることが予想されていた。日本代表はアジアカップに出場しており、FIFAの規約でコパ・アメリカでは拘束力がない。代表チームが選手を拘束できるのは1年で大陸別選手権の場合は1回。つまりコパ・アメリカはクラブが拒否すれば選手を招集できない。
海外組では大迫勇也をはじめてとしてクラブ側がコパ・アメリカ派遣に拒否の姿勢を示していた。協会関係者がクラブを訪問して頭を下げていたというが、反応は厳しいものだったという。加えて、Jリーグは日程発表時にコパ・アメリカの時期にも試合を組んでおり、国内組の招集も難しい状況だった。
厳しい実情について関塚隆技術委員長は「インターナショナルマッチウィーク以外の点に関しては、今後はもっとカレンダー含めて長期的に調整をしていく必要があると思っています」と語るにとどまった。言葉尻をとるようだが、「今後」とはどういう意味だろうか。あまりに悠長ではないか。
ロシアワールドカップ、アジアカップ、U-20ワールドカップ、コパ・アメリカと厳しいスケジュールになることは以前からわかっていたこと。海外クラブとしっかりと交渉してきたのか。あるいはJリーグ、Jクラブが納得するような根回しができていただろうか。
難しい状況であるのはもちろんわかってはいるが、ベストな選択ができない時点で責任問題が発生していることは理解しているだろうか(これが「ベスト」と言われて誰が納得するだろうか)。
「五輪」の御旗のもとに、何もかも許されるわけではない。コパ・アメリカをめぐる惨状はしっかりと検証してもらいたい。
(取材・文:植田路生)
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