福西崇史の後悔
フレッシュな日本は前半34分に先制点を挙げる。稲本潤一が起点となり、三都主アレサンドロが送ったラストパスを受けたのが玉田だった。彼が得意な左45度の位置からシュートを突き刺し、前回大会の世界王者を震撼させた。
これが「奇跡」の始まりになればよかったのだが、ブラジルはこの後、一気にギアを入れる。前半終了間際のロナウドの同点弾を皮切りに、ジュニーニョ・ペルナンブカーノ、ジウベルト・シウバ、ロナウドが立て続けにゴール。日本は1-4であっけなく沈んだ。
試合後、中田英寿がピッチに倒れて動かなった。チーム全体でサポーターに挨拶に行こうしているのに、彼だけは動かない。「ヒデも一緒に挨拶した方がいい。起こして来いよ」と福西に言われた宮本が歩み寄ったが、彼は誘いを断り、仲間とともに行動することはなかった。
「代表での実績が足りないこともあって、ヒデに何か言う時はいつもツネに頼んでいた。そういう姿勢が間違っていたのかもしれない」と福西も悔やんだが、ジーコジャパンのラストは後味の悪いものになってしまった。
中田と中村の重用など、ジーコのチームマネジメントへの違和感、ワールドカップ期間中の練習と報道のあり方の問題、ベースキャンプ地の選定ミス、サポートメンバー帯同不備など、ドイツ大会で露呈された課題は少なくなかった。
その反省が後々に生かされ、その後のワールドカップの準備や戦い方、チームマネジメントへと生かされていったのは確かだろう。中田や中村、小野、稲本ら最高のタレントが揃ったチームだっただけに、日本サッカー界として悔やまれる部分が少なくないが、ドイツでの失敗が糧になったことだけは今一度、認識しなければいけない点だろう。
(文:元川悦子)
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