多彩な顔を持つ本田、新天地はどこに?
メルボルン・ビクトリーの下部組織出身で、オーストラリア国外でのプレー経験がない。そんなホープにとって、20歳にして本田のような欧州のトップレベルでの実績を持つ選手とともにプレーできることは、かけがえのない経験。もはやプロフェッショナルとしての精神を備えた先輩に心酔しているようだ。
「ケイスケは言葉で『ハードワークしよう』と僕らを目覚めさせてくれる。試合の前に『みんな戦おうぜ。やるだけだよ』と声をかける。そういう発言は心に強く訴えかけてくるものがあるし、試合前でも試合中でも、誰もがケイスケを見ていて、ケイスケはみんなを助けてくれる。彼は教育者であり、成功者でもあると思う」
ただメルボルン・ビクトリーの選手たちに、もう本田と共に過ごす時間は残されていない。22日にACLのグループリーグ最終節・サンフレッチェ広島戦が残っているものの、すでに敗退が決まっているため消化試合と言っていい状態。この試合に背番号4が出場する可能性は低いだろう。メルボルンでの挑戦は、これで終わりだ。
メルボルン・ビクトリーは本田という選手が見せたプロフェッショナルとしての精神や価値を、財産として今後のクラブ発展への糧にできるか。
そして本田自身も、「全てのチームや選手たちが少しずつ僕のことを理解してきた。監督たちも同じ。僕をどう止めればいいか、彼らは学んできた。毎試合、スペースや時間を得られなかった。Aリーグは簡単ではないと感じた。いい試合も、悪い試合も戦って、両方とも自分にとって素晴らしい経験になった」というこの1年の経験を自身のキャリアの今後にどう反映させていくか。
シーズンを終えて「来季はまた、東京五輪出場のために、今年と同じように再び変えるつもりでいる」と宣言している。2020年の東京五輪まであと1年、つまりプロ選手としてのキャリア最後の勝負のシーズンを迎えることになる。
サッカー選手としてだけでなく世界中でサッカークラブやスクールなどを運営するビジネスマンとして、さらにはカンボジア代表のマネージャーとして、教育者として、慈善活動家として……本田はピッチ内外でありとあらゆる顔を持つ。こうした多岐にわたる活動と五輪出場の夢を、いかにして同時に追っていくのか。じゃんけんでさえも絶対に負けたくない男は、自分の道を貫いたうえで目標を達成するために新天地選びもこだわり抜くはずだ。3年ぶりの欧州復帰の噂もあるが、この夏の本田圭佑の動きに注目していきたい。
(取材・文:舩木渉)
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