「このしんどい1週間をまた過ごすのか…」
がしかし、今冬フランスに来た昌子は現在、これまでのサッカーキャリアで一度も体験したことがなかった修羅場を体験している。『残留争い』だ。
「初めてなので、慣れてない分しんどい。残留争いが佳境を迎えたこの2週間は常に気が抜けないという…ここ何週間かは、自分のサッカー人生の中でも本当に気を使っているかな…と」。
優勝争いなら何度も経験してきた。
「優勝争いは、次の試合に勝てばいい。なんでそう思えるか、というと、ここまで勝ってきたから首位を狙える今の順位にいる、という根拠があるから。次も勝てばいい、俺ら次第やん、という…。でも下位争いにはその根拠がない。勝ってないからこの順位にいるわけだから、『次も勝てばいい』とは思えないんですよね…」
「(この試合で)決めたかった。このしんどい1週間をまた過ごすのか…」。
『絶対に勝ち点3をとるぞ!』という意志が微塵も感じられなかったこの試合の戦いぶりをみても、トゥールーズの選手たちは、それほど危機感を抱いていはいない様子だ。
トゥールーズは昨季もプレーオフを勝ち抜いて残留を決めた。このヒリついた残留争いの感覚に慣れっこなのか、18位のカーンとの5点差は、「まあよっぽどのことがなければ覆されないだろう」というような、まったり感がある。
しかし実際は、相手が2勝して、トゥールーズが2敗すれば順位はひっくり返る。決して安心はできない状況だ。
【次ページ】尊敬する先輩との対決で勝利を