希望の光となったのは
ワールドカップ初勝利の夢が遠のく中、一矢報いたのは中山だった。後半30分に相馬の左クロスを途中出場の呂比須がファーで落とし、中山が右足でゴール。彼は骨折しながら痛みを押して日本の爪痕をフランスに残した。
そしてもう1つ希望を感じさせたのが、後半34分に名波と代わった18歳の小野伸二だ。彼が華麗な技術を駆使して相手を股抜きしたシーンで留飲を下げたサポーターも少なくなかったはず。結局のところ日本は1-2で敗れた。しかし、世界の凄さを痛感させられたこの経験がその後の糧になったのは確かだ。
カズに代わるエースとして期待された城は1点も挙げられず、帰国した成田空港でサポーターに水をかけられた。
「自分は精神的に弱すぎた。本番3日くらい前から食事が喉を通らなくなり、夜中に嘔吐することもあった。吐くものがないから胃液しか出てこない状態になってました。ドクターも点滴を打ちながら『監督に言った方がいい』と言ったけど、それも言えなかった。いい時の20%のコンディションだったと思うし、フラフラしながら戦ったって結果が出せるわけがない。ホントに最悪でしたね。成田のことも予期してなかったけど、自分にそこまで多くの人が期待してくれていたんだと思い知らされました」
城は悔恨の念を口にしたが、フランスに赴いた誰もが同じような不完全燃焼感を抱いたはず。その悔しさがその後のワールドカップ6回連続出場への第一歩。その重要性を改めて多くの人々が胸に刻むべきだ。
(文:元川悦子)
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