絶対に変わらないGKの大事な役目とは?
―最近では、ドイツ代表のマヌエル・ノイアーのような「スウィーパー・キーパー」が脚光を浴びています。
「もちろんそういう役割を要求されるのもわかるし、オールラウンドにプレーできるようにするための技術は、プロとして持っていなければいけないと思います。
でも僕が強調したいのは、やっぱりそれだけでは、だめだろうということなんです。
プロの中にはインパクトのあるプレーばかりをしようとする選手もいるけど、僕らにとって一番大事な役目は絶対に変わらない。ゴール前での守備だと思うんです。
実際、ノイアーにしても、決して前に出るプレーだけで評価されているわけじゃない。
むしろゴールをしっかり守った上で、前に出ることもできるような選手が、GKとしての完成形として評価されるようになった。そう捉えるのが正しいと思うんです。
いずれにしても、何か特定のプレーだけを得意にしているようなタイプの選手は、なかなか難しいと思いますね」
―ご自身のプレースタイルに関して、長年のキャリアを通じて変わったり、進化したと思う部分はありますか?
「自分ではよくわからないですけど、GKもチームのひとつの駒なので、監督が目指すサッカーのスタイルによって変わってくる部分も当然ありますよね。
だから僕は、そういう意味でもサッカー界の大きな流れ、プレースタイルの流行り廃りを、必要以上に気にしないようにしているんです。プロである以上、GKは監督やチームの変化に順応して、自分に求められるプレーをしていくべきだと思っていますから」
―チームが目指すサッカーの親和性という点に関してですが、代表でもクラブチームでも、この監督の、このサッカーのスタイルはしっくりきたというケースは?
「しっくりきたというか、プレーの幅を広げる上で勉強になったのは、フィリップ・トルシエ監督やセフ・フェルフォーセン監督、ドラガン・ストイコビッチ監督といったヨーロッパの監督の方たちですね。
ヨーロッパ系の監督の方たちはブラジルや日本人の監督の方たちよりも、GKに求めるものがはっきりしていたように感じました」
―具体的には、どのような点に関してですか?
「トルシエ監督はアグレッシブにプレーしろと。前に出て止めるスタイルですね。守備範囲の広さが、すごく求められました。
フェルフォーセン監督の場合は、ビルドアップにもっと絡めと言われました。もともと彼はオランダ人で、GKがDFと一緒にボールをつないで組み立てていくスタイルを重視していた。だからボール回しをしていくときにどこでパスをもらえとか、どこでDFをサポートしろと、細かくリクエストされたのを覚えています」
(文:田邊雅之)
【了】