未だ釈然としないハリルの解任
会心の勝利を手にしてなお、ハリルホジッチ監督への批判は収まらなかった。11月の欧州遠征ではブラジルとベルギーに連敗。12月のEAFF E-1 サッカー選手権で韓国に1-4と惨敗して優勝を逃すと、解任論は徐々に高まる。
そして、平成30(2018)年3月の欧州遠征ではマリに引き分け、ウクライナに敗れると、その翌月、突如として解任された。選手らとの「コミュニケーションの問題」、そして「このままでは勝てない」というのが主たる理由だった。ロシアワールドカップ開幕まであと2ヶ月に迫ったタイミングでの大博打だった。
何をもってハリルホジッチ監督ではワールドカップを勝てないと判断したのかは、未だに釈然としない。ブラジルとベルギーは明らかに日本より格上で、E-1は国内組のみの実質“B代表”。3月の遠征も、調整の最後の仕上げだ。加えて負傷者続出で指揮官が望むメンバーを招集できなかった。
また、ワールドカップで対戦するコロンビア、セネガル、ポーランドは日本より実力が上のチームで、誰が監督をしていたとしても厳しかったはずだ(もちろん本大会で結果を出した西野朗監督の手腕は称賛されるべきだ)。
不可解な解任をめぐっては裁判沙汰にまでなった。約1年続いた裁判は、平成の終わりにハリルホジッチ監督が訴訟を取り下げたことで終結した。時代は令和になり、日本代表も新しい道を進んでいる。だが、ハリルホジッチ監督が日本サッカーに残してくれたものを忘れてはならない。とりわけ、欧州の背中が見えた、あのオーストラリア戦は次世代に語り継ぐべき、貴重な一戦だった。
(文:植田路生)
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