ハリルが出した答え
試合開始約1時間前。スタメンが明らかになると、やはり前日に漏れていたメンバーとほぼ一緒だった。中盤は長谷部誠、山口蛍、井手口陽介。前線は大迫勇也、乾貴士、浅野拓磨。本田圭佑、香川真司の2人がベンチスタートとなる、意外と言っていい陣容だった。
指揮官の狙いは、試合開始とともにすぐにわかった。従来と異なりパスをつないでくるオーストラリアに対し、ボール奪取に優れた3人を中盤で起用することで、相手ボランチを封じる。また、乾と浅野は前線で深さを出し、オーストラリアの3バックの脇をついた。
ボール支配率こそ約40%だったが、オーストラリアは攻撃の形がままならず、日本は少ないチャンスでゴールに迫った。日本のシュート数は18本、オーストラリアのそれは6本と数字上でもはっきりと日本優位が出た。
日本代表がこれほど明確なゲームプランを遂行し、完勝した試合はそれほど多くない。個の力で圧倒するわけでも、格上相手にベタ引きするわけでもなく、同等の相手に戦術的に上回って勝利を得たことは、日本サッカー史にとってエポックメイキングと言えるのではないか。
ハリルホジッチ監督にとっては、批判も多いなかでアジアのライバルをねじ伏せたことは、自身に突きつけられたクエスチョンへの最高のアンサーだったはずだ。欧州の中堅国あるいは中堅クラブが当然のように持っている戦術上の引き出しをようやく日本代表も手にした――そう感じさせた一戦だった。
ワールドカップで、格上相手に対してハリルジャパンがどう戦っていくのか道筋が見えた、日本サッカーにとっても重要な勝利となった。ところが、この試合の価値は無残にも消し去られることになる。
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