ポジティブなムード
前半45分間にはやや危なくなりかけた場面も少々あったが、讃岐は後半立ち上がりからペースを上げ、すぐにペナルティーエリア手前でFKを獲得。これを重松健太郎が絶妙なキックでゴール右上隅へと送り込み、GK杉本拓也の必死のダイブも届かず48分に先制点を奪った。
そのわずか2分後、観客席からは歓声が沸き起こりハイタッチが交わされた。今度は池谷が胸トラップからの見事な右足シュートを放ち、美しい軌道を描いたボールは再び杉本の伸ばした手を越えてゴール左上隅へと突き刺さった。
62分には藤枝の安藤由翔が左サイドで圧巻の突破を披露したが、クロスを受けた森島は1点差に詰め寄る絶好のチャンスを逃してしまう。
この場面を除けば、讃岐はさほど問題もなく試合を終えることに成功した。82分には交代出場の木島がハーフウェイライン付近から思い切ったシュートを放ち、杉本が慌てて戻りながらキャッチ。スタジアムの楽しげなムードを象徴するかのような場面だった。
藤枝は終了間際に1点を返したが、再開直後にタイムアップの笛が響き、讃岐が今季ホーム4勝目を挙げる結果となった。本拠地でわずか5試合を戦い終えた時点で、過去2シーズンのホームでの年間勝利数に早くも並んでいる。
残留のための勝利と、成功のために勝利がもたらす感触は異なる。現在首位のギラヴァンツをホームに迎えての新たな首位攻防戦となる来週末の試合でも、チームはさらなる成功を手にしたいと考えている。MF永田亮太もその意志を明確にしていた。
「サポーターの皆さんにも喜んでもらえたと思いますが、もっと相手を圧倒していくべきだと思います。ファンをもっと喜ばせることができるようなサッカーをしていきたいですね」
それが実現できるかどうかは今後次第だが、今の讃岐はポジティブなムードに包まれている。苦しい数年間を過ごしてきた彼らには、陽光に照らされる資格があるはずだ。
(取材・文:ショーン・キャロル)
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