まさに異次元の2人
この1点がバレンシアの闘争心を完全に打ち砕いた。ホームチームは疲労の影響も重なってかプレスの強度が半減し、思うようにボールを奪うことができない。攻撃も全体としてクオリティが低く、乱れないアーセナルの5バックに悪戦苦闘。後半にヘンリク・ムヒタリアンを投入し、アウェイチームが2シャドー気味にしたことでトレイラ、グラニト・ジャカの2ボランチの脇のスペースも的確に埋められ、ボールを前に運ぶことができなかった。
88分にはマテオ・ゲンドゥージ→ムヒタリアン→オーバメヤンと繋がれ、最後は背番号14がニアサイドに強烈なシュートを叩き込んだ。これでバレンシアは完全にゲームオーバー。サポーターも続々と席を立ってスタジアムを後にするなど、もはや一矢報いる力すら残っていなかった。
試合はこのまま終了。アーセナルは2戦合計7-3でバレンシアを下し、ファイナルへの切符を掴み取った。
この試合の主役は間違いなくラカゼット、オーバメヤンの2トップだろう。バレンシアに先制ゴールを奪われるなど嫌な流れにあったアーセナルを救ったのは紛れもなくこの2人だった。
先制ゴール献上後、後半立ち上がり、そして2-2とされた後の時間帯はいずれもアーセナルにとって重要であり、そこでゴールネットを揺らせたことはチームにとって大きな救いとなったはず。この2人のコンビネーションや決定力、そしてそのクオリティはバレンシアにとって脅威であり、唯一止められなかった存在といってもいいだろう。
オーバメヤンはこの試合で全体トップとなる6本ものシュートを放ち、そのうち3本をゴールへ繋げている。一方ラカゼットはシュート数2本のうち1本を得点に結びつけ、ドリブル成功数は全体トップの4回となっているなどこちらも攻撃面での輝きは圧倒的だった。
チームとしてのシュート数は9本となっているが、そのうちの8本はなんとオーバメヤンとラカゼットによるものだ。そしてそのうちの半分を得点につなげているあたりは、素晴らしいと言うほかない。まさにこの2トップは異次元そのものであった。
(文:小澤祐作)
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