群れの先頭に立つ者
「今日のゲームはボランチがどれだけ前向きに、相手のボランチをつぶせるかというポイントがありました」
「奪って、前へつけて、潜り込む。前の選手に裏へという意識があるので、奪って即裏を狙うプレーもできた」
「奪う前から、前が動き出すだろうという予測ができる。今年は3人目の動きも多くなっています。リスクもありますが、それを負わないとこういうスタイルはできないと思います」
J1第10節の名古屋グランパス戦を1-1のドローで終えた後、齊藤は次々に投げかけられる質問によどみなく答え続けていた。デシャンを思い出した。答える内容もしっかりしていたが、それよりも話しているときの雰囲気である。相手の目を真っ直ぐに見て、率直かつ明快。澄んでいて、堂々としている。視線は常に前方に向けられている。
経験を積んでリーダーになる人もいるかもしれない。しかし、年齢に関係なくリーダーシップを持っている人もいる。プロサッカーのリーダーは、一般社会の組織リーダーとは少し違っている。人に慕われる、調整ができるという資質より、群れの先頭に立つタイプかどうか。ライオンの群れを率いるボスであり、極端な言い方をすると、命を預けても大丈夫そうな人。
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