リーダー
まあ、そうなるよな――フランスが優勝したときにそう思った。2018年ロシアワールドカップでフランス代表が世界一を勝ちとったことにではなく、ディディエ・デシャンが優勝監督になったことに対して。何か大きな仕事を成し遂げる、以前からそう思っていたからだ。
ASモナコの監督だったころにインタビューしている。財政が逼迫していた当時のモナコは、何台かのトレーラーハウスがコンクリートブロックの上に置かれていて、そこで会議や事務を行っていた。デシャン監督に話を聞いた部屋(?)には選手用のマッサージ台が置かれていた。
「名選手が名監督になることもあるし、そうならないこともある。無名な選手が名監督になることもあるし、そうならないこともある。関連性はないよ」
マルセイユとユベントスでヨーロッパチャンピオンになり、レ・ブルーの主将として世界一も獲った。デシャンは紛れもない名選手だった。しかし、名選手は往々にして監督としては成功しない。少し意地悪な質問すると、未来の世界一監督は明快に一蹴してみせた。この人はいずれ大きな仕事をするだろう、そのときに確信に近いものを得ていた。
練習場に偶然居合わせたナント・ユース時代のチームメートが言っていた。
「ディディエは当時からリーダーだったよ」
1998年にフランスがワールドカップに初優勝したとき、デシャンは「一番ヘタな選手」と言われていた。小柄で身体能力に飛び抜けたものはなく、技術的にもとくに目立った特徴はない。しかし、デシャンはどのチームでも中心選手だった。リーダーだったからだ。抜群のリーダーシップは監督としても発揮された。
デシャン監督の成功を確信したのは、筆者に見る眼があったからではない。たぶん、誰でもそう思うはずなのだ。接した人の誰もが、彼が生来のリーダーだと気づかされる。そういうパーソナリティーだった。
齊藤未月はU-20日本代表のキャプテンを任されるそうだ。「まあ、そうなるよな」という感想である。