最後の最後で逃した決勝の舞台
95分、競り合いに勝ったジョレンテがボールをアリへ渡すと、同選手は斜めに入ってきたモウラへパス。ブラジル人FWは左足でシュートを放ち、これがゴールへ吸い込まれた。
この得点が生まれた瞬間、アヤックスの選手たちはバタバタとピッチに倒れ込んだ。あと1点奪えれば問題はないのだが、残された時間はあまりに少ない。この時、アヤックスの決勝進出の可能性は、ほぼなくなった。
失点シーン、ジョレンテと競り合っていたのはこちらもフィジカルには自信を持つデ・リフトだったが、勝つことができなかった。アヤックスは最後の最後までスペイン人FWに手を焼いてしまう結果となってしまったのだ。これは間違いなく、敗北の大きな理由となるだろう。
そして試合はこのまま終了。2戦合計スコアは3-3だが、アウェイゴール数で上回ったトッテナムがクラブ史上初のCL決勝進出を果たした。
試合後、ファン・デ・ベークは目に涙を浮かべ、タディッチはピッチに座り込んだまま、立ち上がることができなかった。来季はバルセロナへの加入が決まっているため、これがアヤックスでの最後のCL出場となったフレンキー・デ・ヨングもただただ下を向くしかなかった。
ただ、今大会のアヤックスはやはり強かった。若いチームながら組織として洗練されており、レアル・マドリー、ユベントスなどの強豪を次々と敗退に追い込んだ。トッテナムには敗れたが、2戦合計スコアは3-3。ほぼ互角の戦いを繰り広げていた。
決勝進出を逃した事実を覆すことはできない。ただ、若い選手が主体の同クラブがこのような劇的な敗退を経験することは、決して悪いことではないのではないだろうか。とくに、デ・リフトやF・デ・ヨング、ファン・デ・ベークら、これからビッグクラブへの移籍を果たすであろう若手選手にとってはかけがえのない経験となったはず。アヤックスを離れる時が来ても、このトッテナム戦だけは、脳裏に残り続けるはずだ。それを力に変え、選手としてさらに高みを目指してほしいものである。
アヤックスのCLでの冒険はここで終わった。ただ、彼らの次なる冒険は、まだ始まったばかりだ。
(文:小澤祐作)
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