マリノスが描く未来への航海図
これをチームの結果と結びつけてしまうのは簡単だ。おそらく影響はあるだろう。だが、もし観客動員数を結果に左右されずより高い水準に保つことができたらどうだろうか。収入は大幅に増加し、その増収分を新たな集客施策や新戦力の獲得に回せるかもしれない。
「すでに来場いただいているお客さんに、さらに来場する回数を増やしてもらうこと。もう1つは潜在顧客をしっかり獲得していくこと。この基本となる2つの軸は、これからも変わらないと思います。現状は平均で3〜4万人くらいまで持っていくことを目指して走っています」
そう語るのは横浜マリノス株式会社のFRM(Fan Relationship Management)事業部でマーケティングを担当する永井紘氏だ。実際、あの6年前の新潟戦でマリノスに6万人超を集められるポテンシャルがあることは証明されている。
ざっくりとした数字にはなるが、マリノスがホームタウンとしている横浜市の人口は約370万人、横須賀市は人口約40万人、大和市が約24万人で、3つの自治体を合わせて約434万人が暮らしている。日産スタジアムのある横浜市港北区だけでも人口約35万人と考えれば、ホームタウンが持つポテンシャルは全国屈指なのだ。
今、マリノスはチケット販売の改革や集客施策の見直しを通して、事業面でのさらなる成長も目指している。ウェブ上でのチケット販売を増やすことによって顧客を可視化し、データを収集して次のマーケティング施策に反映させていくといった循環を作ることもできるようになってきた。今季からホームゲーム全試合で導入されているチケットの変動価格制も徐々に浸透してきている。
最後にリーグタイトルを争ってから6年の時が経った。リーグ優勝は2004年が最後で、タイトルそのものからも5年遠ざかっている。ピッチ内ではポステコグルー監督の持ち込んだアタッキング・フットボールによって見る者を魅了するサッカーが展開され、ピッチ外でもファンと共に歩むクラブ作りや、テクノロジーやデータを活用したさらなる発展が見えてきた。ようやく掴みかけた栄光への道筋を見失うわけにはいかない。この両輪を回転させ、前に進み続けることこそがマリノスの“V字回復の方程式”だ。
(取材・文:舩木渉)
※掲載当初ホームタウン(大和市)に関する記述に誤りがありました。読者のみなさま、横浜F・マリノス、大和市をはじめとしたホームタウン、関係者のみなさまにお詫びするとともにタイトルおよび記事内容を訂正させていただきます。
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