2018年に訪れた転機
その後はしばらくは我慢の時が続いた。2014年は一度も優勝争いに絡めないまま7位に終わり、樋口靖洋監督が退任。武器だった堅守は健在でリーグ最少29失点は特筆すべき数字だが、攻撃はわずか37得点と残留争いをしていたチーム並みの寂しさだった。得点ランキング10位以内にマリノスの選手は誰もいない。
この頃からシティ・フットボール・グループ(CFG)がマリノスと提携関係となり、徐々に現場にも欧州の知見が入り始める。2015年に就任したエリク・モンバエルツ監督は、フランスからマリノスにやってきて、3シーズンかけて2019年のサッカーに繋がるものを残した。
とはいえ結果としては振るわなかった。2ステージ制になった2015年は年間7位、続く2016年は53得点と攻撃面で進歩が見られたものの、引き分けが多く年間10位。この年はマリノスタウンの定期借地契約が満了にともなう新横浜公園内施設への練習拠点の移転という環境の変化もあった。そして2017年、一時は2位につけたが、最終的には5位でAFCチャンピオンズリーグ出場権獲得を逃した。
モンバエルツ監督が指導していたサッカーについて、喜田拓也は「ある程度相手の良さを把握しながら、自分たちがどう出ていくか。どちらかというと堅守速攻の色が強かった」と語っていた。実際、毎年のように失点の少ない守備力にはチームとして自信を持っていた。
そのアイデンティティが大きく揺らぎかねない変化は、2018年に起こる。新たに就任したアンジェ・ポステコグルー監督は高いボールポゼッション率をベースに、試合を支配し続ける攻撃的なサッカーをマリノスに持ち込んだ。
「最初から楽しかったですよ。このスタイルもそうだし、サッカー自体も楽しい。ポステコグルー監督が来て最初にそう思ったのは覚えています」
そう語る喜田をはじめとして、多くの選手が前向きに新たなサッカーの習得に励んだ。ただ、なかなか結果は出なかった。最終盤まで残留争いに巻き込まれ、大勝する試合もあれば、いきなり惨敗を喫する試合もあるなど難しいシーズンを過ごすことになる。
(取材・文:舩木渉)
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