まさかの連敗で優勝を逃し…
快晴の新潟戦、日産スタジアムはアウェイ側ゴール裏を除いて空と同じ“青色”に染まっていた。そのほとんどがマリノスが勝利して優勝する瞬間を見届けにきている。試合前から会場全体に高揚感が漂っていた。
ところが、試合が始まるとピッチ上のマリノスの選手たちは苦しんでいた。アウェイにもかかわらず多くのサポーターの後押しを受ける新潟の猛烈なプレッシングに晒され、思うようにボールを運べない。チャンスを作ってもゴールに結びつかない。
すると後半も終盤に差し掛かった72分、コーナーキックから川又堅碁に豪快なゴールを決められ、マリノスは先制を許してしまう。そして後半アディショナルタイム、途中出場の鈴木武蔵にトドメを刺された。
マリノスは勝てば9年ぶりの優勝の試合を0-2で落とし、日産スタジアムに集まった6万人を超える観客のほとんども肩を落として帰路についた。さらなる衝撃は依然として優勝の可能性を残していたJ1最終節、アウェイでの川崎フロンターレ戦だった。
当時の等々力陸上競技場はメインスタンドの改修前で、収容人数も今より少なかった。故にチケットを買えるわけがなく、自宅のテレビで試合を見ていた。結果は0-1の敗戦。最後の最後でサンフレッチェ広島に抜かれ、悲願の優勝を逃した。これはマリノスにとって2013シーズン最初にして唯一の連敗だった。
試合が終わってタイトルが手の中からこぼれていった瞬間、齋藤学が天を仰ぎ、中村俊輔が地面に突っ伏して号泣していた姿は今も脳裏に焼きついている。今となっては想像することしかできないが、あと一歩で目標に届かなかった悔しさは計り知れなかっただろう。
この年、J1優勝こそ逃したもののJリーグMVPには中村俊輔が選ばれている。翌年1月1日、旧国立競技場で最後になる天皇杯決勝は制したが、やはりリーグ優勝を逃した悲しみは消えない。2013年はマリノスにとって1つのターニングポイントだったのかもしれない。