単純なマッチアップはほぼ起こさず
結論を言えばファン・ダイクとメッシの完全な1対1はほぼ起こらなかった。というよりはファン・ダイク自身が周りの選手を上手く動かしながら、1対1になる状況を作らなかったとも言える。結果、連係しながらメッシのドリブルのコースを限定し、ボール奪取に成功していた。そういう意味ではシュートにつながる1つ手前のプレーではファ・ンダイクが上手く制していたとも言える。
後ろが安定していることによって、リバプールは安心して前線からプレスをかけることができた。
そもそもリバプールのプレスのかけ方は非常にリスキーである。例えばバルセロナの右サイドバック、セルジ・ロベルトがボールを持った際、左ウィングのサディオ・マネは縦のコースを消しにいくというより、中盤やセンターバックへのパスが出しにくくなるようなプレスを背後からかけている。そのため前線へのパスコースを消しにいくのは中盤のナビ・ケイタやジェイムズ・ミルナーなのである。
多くのチームが守備ブロックを作る際、DF4人+MF4人の2ライン、8人以上で守ることが多いなか、リバプールは強力な3トップを高い位置に残すためにもDF4人+MF3人の7人で自陣を守ることが多い。代わりに中盤にハードワーカーを3人配置して中央だけでなく両サイドもカバーしつつ、ウィングがサイドを限定するプレスをかけることで局所的に数的有利を作る。
バルセロナ戦でもこの攻撃的な守備を行い、多くの決定機を作らせないことに成功していた。だからこそ得点こそ決まらなかったがポゼッション率は53%とリバプールのほうが高かったのだ。
ただこれが上手くいった前提として、仮にプレスの網を突破されたとしても後ろでファン・ダイクがメッシを止められる確信があったという部分が大きい。でなければリスキーな守備戦術をとることはできない。